無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
一樹side
*
「んん……っ」
なにかが腕の中で動いている気がする。
なんだ……?
なに……、もうちょっと寝たいんだけど。
腕の中のものは……、分からない……。
ただ少しだけ柔らかい……なにか。
それが、俺の腕の中で動いている。
一体何が動いているんだ……。
「染野くん……っ?」
ただ不思議に思っていたとき、近距離で、俺の名前を呼ぶ、高めの声が聞こえた。
ん……だれ?
この声は、俺の腕の中から聞こえるような……、そんな気がする。
そして、その〝腕の中の何か〟はぴたりと動きを止めた。
なぜだか愛おしく感じて、思わずひときわ強い力でそれを抱きしめた。