無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる

一樹side






「んん……っ」




なにかが腕の中で動いている気がする。



なんだ……?



なに……、もうちょっと寝たいんだけど。



腕の中のものは……、分からない……。



ただ少しだけ柔らかい……なにか。



それが、俺の腕の中で動いている。



一体何が動いているんだ……。




「染野くん……っ?」




ただ不思議に思っていたとき、近距離で、俺の名前を呼ぶ、高めの声が聞こえた。



ん……だれ?



この声は、俺の腕の中から聞こえるような……、そんな気がする。



そして、その〝腕の中の何か〟はぴたりと動きを止めた。



なぜだか愛おしく感じて、思わずひときわ強い力でそれを抱きしめた。


< 199 / 486 >

この作品をシェア

pagetop