無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
「君に拒否権なんてないから。
ここまで来たんだから、俺を満たして。強制」
「……っ」
耳元でそんなことを言われて、ぞくりと肌が粟立つ。
……どうしよう、だれか、助けて……っ。
思い浮かんだ人物は、ただ一人だった。
「……一樹、くん……っ」
「玲奈っ!!」
大好きな人の名前を呼んだその瞬間、大好きな人の声が私を呼んだ。
そして、先輩との距離は離され、代わりに一樹くんの胸に体がすぽっと収まる。
その温もりや匂いに安心して、涙があふれた。
「いつき、くん……っ?」
「怖い思いさせてごめん、玲奈」
はっとして顔を見あげると、そこには確かに一樹くんがいて。
私を見て一樹くんはふっと優しく微笑んで、私の頭にぽんと手を乗せた。
……あった、かい。
一樹くんの温もりが、やっぱり一番安心する。
そして、一樹くんはそっと私の頭を自分の胸に押しつけて、辺りが真っ暗になった。