ただ、一面の青。
淡黄蘗
*
「もう教室戻れよ」と言えば、菜乃花は静かに頷いて屋上から出て行った。
「おい、サク」
「何だよ」
「お前、一体植草さんと何があったんだよ」
説明を求める瀬戸が俺の腕を掴む。その強さから強い非難を感じたが、自分でもこの目紛しい感情をコントロールできなかった。岩で砕ける荒波のような、どこに飛沫が飛んでいくか分からない、そんな感情。
「…別に」
「どう考えても別にって間柄じゃねーだろ!」
訳がわかんない、と瀬戸は大袈裟にため息を吐くが俺と菜乃花の関係は説明しようにも難しい。仮に説明できたとしても、他人に簡単に話すものでもない。
「サクがクズなのはいつもの事だけど、あれは流石に態度酷すぎない?」
「俺の態度が酷いからって瀬戸に関係ある?」
「…植草さんに同情してるんだよ」
「すんなよ」
「え?」
瀬戸の態度が一々気に触るのはどうしてなのか自分でも良く分からないが、苛つくものは苛つくし、腹が立つものは腹が立つ。
「菜乃花に同情すんなよ」
「えっと…どういうことだ?」
「お前が、菜乃花を気にするな」
忠告のように言えば「サク…それは嫉妬?」と困った顔を浮かべられ、無意識に舌打ちが漏れる。
「は?俺が嫉妬なんてする訳ないじゃん」
アホらし、と背を向けると、その背に瀬戸の揶揄する声が投げ掛けられた。
「でもサク嘘ついたじゃん。植草さんと付き合ったって」