Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 恋人同士、婚約者、彼氏彼女。たとえ偽物でも慧弥の恋人という立場を得られたことで想乃は大きな高揚感を抱いていた。

 本物ではないことに勿論不安はあった。果たして一年後はどうなっているのか。極力考えないようにして、今のかりそめの状態に浸っていたかった。

 彼と契約を交わした日から四日が過ぎていた。慧弥とはメッセージを交わし合い、コンビニで顔を合わせる日々が続いている。

 あの日。デートのお礼をメッセージで伝えると、二、三通のやり取りを経てから退職に関する助言をもらった。

 退職願いに一身上の都合で、と書くものの具体的な理由をどう伝えたらいいものかと考えあぐねていた。慧弥に相談すると【婚約が決まったからと伝えたらいいよ】と返ってきた。婚約といっても、一年後には破棄をされている状態なのに果たしてそれでいいのだろうか。少しの迷いはあったけれど、想乃はコンビニの店長にそのままを伝えた。

 理由が理由なので店長は大いに喜んでくれて、逆に申し訳ない気持ちになった。

 その点、清掃業のほうは何の問題もなく退職願いが受理された。スタッフの多い会社だからだろう。
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