Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 少年たちの誰しもがゴクリと息を飲み込んだ。

「あ、そうそう。暴力によって相手に怪我を負わせた傷害罪もプラスしなくちゃいけないねぇ」

 お山の大将である田辺翔平をはじめ、水戸と平川も(ひる)み、一様に顔を蒼くした。さっきまで頑なに押さえつけていた男子生徒から身を引き、互いに目配せする。目の前に対峙した営業マンをどうすべきか思案している。

「ああ、なんとも嘆かわしい。前途ある若者をこんな形で警察に突き出すことになるとは。いやはや、世も末とはまさにこのことだー」

 男は片手で顔を押さえて宙を仰ぐ。どこか芝居がかった物言いを聞き「た、頼むよ」と平川が声を上ずらせた。

「スタンガンは翔平のアイデアでオレたちには関係ないんだ……っ」
「そ、そうだよ。だいいちこいつに目ぇ付けたのも翔平でオレらじゃないし!」
「っお、おまえら」

 いつも命令される側の二人が急に裏切ったと知り、田辺翔平は大袈裟に狼狽えた。「だってそうじゃんか!」と平川が田辺に歯向かう。

 そこでようやく地面に伏せていた男子が起き上がった。不安そうな表情で事の次第を見守っている。

「なに言ってるの」

 田辺らの口論に割り込み、営業マンは涼しい顔で彼らを見つめ返した。

「だれが悪くてだれは悪くないとかないから。そんな都合のいい風にはならないよ。みんな同罪。ちゃんと動画にも残ってるから」
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