Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「同期?」と言い、水沢は一瞬考え込むような顔をした。そして「……ああ、あれかな」と呟く。

「最初から二股かけられてた彼女がいたらしくてさ……」
「二股?」
「そっ。それが同期の彼女って知らなくて付き合ったら、結果二股だったとか。略奪だのなんだの疑われて……あいつはそういうことに関しては、相当恨みを買ってるだろうな」

「ははは」と苦笑し、水沢が缶を傾けた。

「多分、欲しかったんじゃないかな」
「……え?」
「本気で好きになれる人」

 本気で好きになれる人——。

「……慧弥のこと、頼むよ?」

 水沢が言い、飲み終えた缶をゴミ箱に捨てる。

「あいつ、恋愛に関してはかなり拗らせてるから……今回のがほぼ初恋みたいなもんだと思う。それだけに、浅倉さんの存在は相当大きいはずだよ」

 突然、強い風が吹き抜けた。想乃の髪の毛が煽られ、慌てて手で押さえた。ベンチの後ろの木々も枝をしならせ、大きく揺れていた。

 想乃のスマホが鞄の中で鳴った。

「噂をすれば何とやら」

 水沢がにやりと笑い、横目を向けた。

「電話、慧弥からでしょ?」

 スマホの画面を見て、想乃は思わず苦笑した。

「……当たりです」

 電話に出ると、慧弥らしい優しい声をかけられた。警察署での取り調べで、想乃が沈んでいるのではないか、そう心配をしてかけてきたらしい。

 想乃は「大丈夫です」と言い、顔を綻ばせた。「今、お友達の水沢さんと一緒なので」。
< 354 / 480 >

この作品をシェア

pagetop