Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜


「……うそ」

 想乃の唇が震え、言葉にならない驚きが自らを支配する。

「郷、なの?」

 震える声で問いかけると、電話の向こうから冷静に返事が返ってきた。

『……はい』

 ミライ、いや、三十年後の浅倉郷の声は、未だに可愛らしい少女の響きを保ちながらも、喜びに満ちているのが感じ取れた。

「なんで……?」

 想乃の声が震える。思わず口にした言葉の意味を、想乃自身が理解しきれなかった。

「なんで郷が……こんなことしてるの?」

 姉としての心からの疑問が、声となって表れた。

 想乃の中で、郷はあくまであの十三歳の少年だった。

 未だに子供で、時に大人びてはいるが、根底には純粋で優しい心を持っている。

 料理が得意で、ゲームに夢中で、姉のことを大切に思い、慧弥を慕っている。

 そんな弟が、なぜ未来でこんなことをしているのか。

『……話せば長くなります』

 郷は静かに告げた。

『でも、言えない部分もあるんです。僕が話すことで、そちらのできごとが変わってはいけないから……。Xの正体を漏らせないのも、そのためです。
 せっかく慧弥さんが、姉さんの運命を幸せな方向へ導いてくれたのだから』

 郷の声は切実だった。
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