Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃は混乱した。

 そんな彼女を、慧弥が静かに見つめている。「大丈夫」と声をかけ、優しいまなざしで続けた。

「この世界では、想乃は死なない。俺がついているから、絶対に死なせないし……ミライさんの介入はこのためもあったんだよ?」

 想乃は彼の笑みに安堵をもらい、ゆっくりと頷いた。一度広がった不安が、嘘のように消えていく。

「確かに」と慧弥の低く落ち着いた声が響いた。

 彼は再び、電話越しのミライに語りかけた。

「起こる事象によって、こちらとそちらではずいぶん性格や思考が変わるみたいですね?」

 そう言いながら、慧弥は一度目を伏せた。慎重に言葉を選び、次の瞬間——彼は衝撃的な言葉を放った。

「ねぇ、“浅倉郷”さん?」

 ——ドクン……ッ!

 想乃の心臓が大きく跳ねる。

 ……今、なんて?

 耳鳴りがするほど驚いた。

『……そういうことです。慧弥さん』

 電話越しに、諦めたような笑い声が漏れ聞こえた。

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