Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃は、フィッシング攻撃でパスワードを入力してしまった件を話した際、日記についても慧弥に打ち明けていた。彼に内容を読ませることはできなかったけれど、書くのをやめた理由は伝えていた。

「美海に日記の存在を明かしたのは、Xだと思う」
「……え?」
「想乃に干渉していたのと同じように、Xは日記サイトの存在とアカウントの正体を、美海にメールで教えたんだろう」

 想乃は言葉を失ったまま、目を大きく見開いた。手の中にあるチョコの包みも開けられず、固まっている。

 慧弥が小さく息をつき、彼女の手からチョコを受け取ると、包みを開けてそっと口元に運んだ。

 口の中でとろけるような甘さが広がる。

「だって。こんな偶然があると思う? たまたまネットの海から、美海がそのサイトにたどり着き、たまたま読んだ日記で想乃だと見当をつけるなんて。確率的に考えても、かなり低い」
「確かに……」

 指先についたチョコを舐める慧弥を見て、想乃はこくりと頷いた。

 グラスに残るアルコールをひと口飲むと、さっきまでのチョコの甘みが残っていたせいか、思いのほか酸っぱく感じた。

 グラスを置いた瞬間、慧弥が身を寄せる。

 わずかに顔を傾け、彼の唇が重なった。

「可愛いね」

 優しくそう囁き、慧弥は彼らしい笑みを浮かべた。

< 448 / 480 >

この作品をシェア

pagetop