Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
ここ数ヶ月、想乃の楽しみはこれだけだった。家庭の事情により大学を中退し、急遽アルバイトとして雇ってもらったコンビニで、名前も知らない彼を密かにスイーツプリンスと呼んで、彼が訪れるほんのひとときに幸せを感じている。
マスクを付けた裏側で口角が上がる。うっかり顔が綻んでしまうけれど、接客中であればにこにこ笑っていても何らおかしい風には見られない。
スイーツプリンスが買っていったデザートは今週出たばかりのバスク風チーズケーキだった。自分も食べてみたいなと目を付けていたやつだ。帰りに買って帰ろうか。そう考え、デザートが並ぶ陳列棚を見てはため息が浮かんだ。無理だ。三百円ほどの値が付いたそれは想乃がたやすく買えるデザートではない。そんな贅沢は許されない。
彼と同じものを食べて、せめて味覚だけでも共有したいと思うのに、そうできない。また深くため息がこぼれた。心の中だけで一喜一憂するこの感情に名前を付けるとしたらーー、癒やし、なのだろうか。
マスクを付けた裏側で口角が上がる。うっかり顔が綻んでしまうけれど、接客中であればにこにこ笑っていても何らおかしい風には見られない。
スイーツプリンスが買っていったデザートは今週出たばかりのバスク風チーズケーキだった。自分も食べてみたいなと目を付けていたやつだ。帰りに買って帰ろうか。そう考え、デザートが並ぶ陳列棚を見てはため息が浮かんだ。無理だ。三百円ほどの値が付いたそれは想乃がたやすく買えるデザートではない。そんな贅沢は許されない。
彼と同じものを食べて、せめて味覚だけでも共有したいと思うのに、そうできない。また深くため息がこぼれた。心の中だけで一喜一憂するこの感情に名前を付けるとしたらーー、癒やし、なのだろうか。