Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
ある特定の男性にドキドキと心音が高鳴り、彼とお近づきになりたいと思うのは、世間一般的には恋慕、つまりは恋なのかもしれないが。自分のこれは決して恋ではないと決めつけていた。恋であってはいけないのだ。暗示をかけるような思いで、常日頃から自分にそう言い聞かせている。
だってうまくいくはずがない。
彼はいつも高そうなスーツを上品に着こなし、ブランド物の時計を身につけている。明らかに想乃より年上で、結婚相手、もしくは恋人がいてもおかしくない。今のところ左手の薬指に特定のリングは嵌まっていないけれど、だからといって独身と決めつけるのはやや早計だ。
自分とは住む世界が違う。日々時間に追われて、お洒落をする余裕もお金もない想乃には、高望みすぎるほど釣り合わない相手だ。
だいたい自らの現状を思えば、恋などしている時間など微塵もない。三ヶ月ほど前から弟とのふたり暮らしが始まり、生活費を稼ぐだけで精一杯なのだ。
見ず知らずの客の一人に高尚な想いを抱き、接客し、ただ見つめるだけの行為は、言ってみれば推し活だ。彼の声を間近に聞き、表情を観察してマニュアル通りの接客をする。そのたったひとときでまた明日も頑張ろうと思える。彼の存在が癒やしとなり、日々の活力になる。ゆえに推し活。
だってうまくいくはずがない。
彼はいつも高そうなスーツを上品に着こなし、ブランド物の時計を身につけている。明らかに想乃より年上で、結婚相手、もしくは恋人がいてもおかしくない。今のところ左手の薬指に特定のリングは嵌まっていないけれど、だからといって独身と決めつけるのはやや早計だ。
自分とは住む世界が違う。日々時間に追われて、お洒落をする余裕もお金もない想乃には、高望みすぎるほど釣り合わない相手だ。
だいたい自らの現状を思えば、恋などしている時間など微塵もない。三ヶ月ほど前から弟とのふたり暮らしが始まり、生活費を稼ぐだけで精一杯なのだ。
見ず知らずの客の一人に高尚な想いを抱き、接客し、ただ見つめるだけの行為は、言ってみれば推し活だ。彼の声を間近に聞き、表情を観察してマニュアル通りの接客をする。そのたったひとときでまた明日も頑張ろうと思える。彼の存在が癒やしとなり、日々の活力になる。ゆえに推し活。