Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「浅倉さんの好きそうなカフェ。あの時間に起きたんならお昼食べてないんじゃないかと思って」
「……あ」

 想乃はこくりと小さく頷いた。実はそうなのだ。好きな人と会うための準備だけで手一杯だった。

「今日は天気もいいし気持ちいいんじゃないかな」
「楽しみです」

 信号が赤になり、いったん車が停車する。「それに」と続けて彼がこっちを向いた。「スイーツも絶品だしね?」

 そう言って浮かべた無邪気な笑みを見てキュンと胸が締め付けられた。

 想乃の家から一時間程度走り、着いた先は自然豊かで空気の澄んだ一軒家のカフェだった。森カフェ、と無意識に思ってしまう。

 雰囲気のある木の扉を押して開けると、カランカランとドアベルが鳴る。「いらっしゃいませ」と爽やかな挨拶が聞こえた。エプロンをした愛想のいい店員に迎えられて、彼が「予約をした並樹です」と伝える。

「並樹さま、お待ちしておりました」

 店員が一礼し、店の奥へと案内してくれる。その途中で上に続く階段を通り過ぎた。どうやら二階席もあるらしい。一階奥の、ガラス張りの扉を抜けた先には数席のテラス席があった。ちょうど玄関から見て裏側になる。想乃は吐息と共に「わぁ」と声を上げていた。

 雑誌でしか見たことのない絶景が広がっていた。
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