灰を被らないシンデレラ
意識が浮上して見えたのは天井と、友人の顔。
香里は憂と目が合うとホッと安心した顔を見せた。
「憂!良かった…」
「私…どうして…」
「此処にきた途端倒れたんだよ。とりあえずみんなが戻るまで私が付き添う事になったんだけど、すぐに目が覚めて良かった」
顔色ひどいよ、と言う香里の声を聞きながらゆっくりと起き上がる。
くらりと意識が回ったけれど、倒れるほどではなかった。
水飲んでおきなよと香里から差し出されたペットボトルをありがたく受け取り、少しだけ口に含む。
「憂、これからどうするの…?」
週明けに顔を合わせた段階であまり眠れてないことは話していた。
察しのいい彼女の事だ、はっきりとは言ってないが憂が眠れていないのは夫婦間の問題だと予想はついているのだろう。
それでいて何も聞かずにいてくれる。
自分には過ぎた友人だ。
どうすると聞かれても、柊との家以外に行く宛など無い。
けれどあの寂しいだけの家に、今はどうしても帰りたくなかった。
「香里…お願いがあるの」
憂はそう言って、深く頭を下げた。
「お願い。今日だけでいいから泊めて欲しい」