灰を被らないシンデレラ


子どもの純真さのなんたる恐ろしい事か。

泡を吹きそうな勢いで目を白黒させる憂を他所に、黎はキラキラとした表情で柊を見つめる。

どういう事かとこちらに目を向けてくる柊に羞恥で体が熱くなり、これ以上何も言ってくれるなと口元に人差し指を当てて黎に駆け寄る。


「なんで?ねーちゃんだってそうだねっていってたじゃん」


嘘をつくなウソを。
そうかもしれないと言ったんだ自分は。


「ほう…」


何をどう理解したかは分からないが、王子様のような微笑みの背後に悪魔が垣間見え、それが後で詳しく聞かせてもらおうかと言っていた。


「黎くん、ありがとうございます。検討しますのでひとまず憂は連れて帰りますね。お義父さんによろしくお伝えください」
「わかった。ねーちゃんまたね」


力無く黎に手を振り返し、憂は柊のエスコートにより助手席へと乗り込んだ。


運転中はスマホを見せられないので始終無言だったが、帰宅中ずっと柊はどこか楽しそうにしていて、自宅に入るや否や玄関の扉に背を押し付けられた。






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