灰を被らないシンデレラ
「おはよう柊さん。朝からセクハラはやめてくれるかな?」
「却下。こちとら深刻な憂不足なんだよ」
後ろから憂を抱き、その手は彼女の胸と太ももを撫でて愛しい妻の身体を堪能している。
そんな夫はつい昨日まで5日間の出張に出ており昨晩帰ってきたばかりだ。
なので彼の言わんとすることは分かるのだが、生憎今日は憂も予定があるのでそれなりに焦っている。
「分かったから、また後でね。とりあえず朝ごはん食べよう」
チュッと音を立てて首筋に埋まる柊の頬にキスをすれば、満更でもない顔をして体を離した。
寝巻きのスウェット姿なのに何故か柊が着ると雑誌の撮影のようだなどと思いながらその背を見送り、アイランドキッチンの前のテーブルに朝食を並べた。
「お前、今日結婚式だっけか」
「そうだよ。大学の友人のね」
今日は友人の香里の結婚式に参加する。
だからほどほどに急いでいるのだ。
椅子に腰掛け手を合わせて「いただきます」と言って湯気のたつ味噌汁を口につけたところで柊が話を続けた。