〜Midnight Eden〜 episode1.【春雷】
『風呂、入りますか?』
「伶まだなんでしょ。先に入っていいよ」

 ソファーからひらひらと京香の片手が挙がる。伶はまた溜息をついて、散らばる京香の服を集めて脱衣場の洗濯カゴに投げ入れた。

伶も服を脱いで浴室に入った。舞が遊んだ後の亀のおもちゃが湯船に浮いている。
ピンクの亀は側面のネジをまくと自動で走る仕組みになっていて、舞はいつもこれを湯船に入れて遊んでいた。

 ピンクの亀を湯船に浮かせたままにして、伶は頭からシャワーを浴びる。髪と身体を洗って湯船に浸かっていた伶の目の前に、裸になった京香が現れた。

「れーいーくーん。一緒に入ろ」
『……母親と風呂に入る年でもないですけど』
「母親だと思ってないくせに」

 ふふっと含み笑いをした京香が伶のいる浴槽に入ってくる。彼女は恥じらいもなく、胸元も局部もまったく隠そうともしない。伶は思わず京香から顔をそらした。

京香は伶に寄り添い、彼の肌荒れひとつない肌を撫でる。京香の茶髪の長い髪の毛が水面に広がって浮いていて、束になって浮いた髪の毛が得体の知れない生物のようで気味が悪かった。

「ねぇ……今日、あの人家に居た?」
『いましたよ』
「女と一緒だったでしょ? 私よりも、わかーい女」

伶は答えない。彼が答えずとも京香は全部を知っている口振りだった。

「興信所に調べさせたんだけど、相手は高校生なのよねぇ。あんなブッサイクな女で勃つのかしら。男は抱ければ女なんて誰でもいいのね。おまけに私達の寝室使ってさぁ。最悪よ。メスガキが使ったシーツ、明日クリーニングに出さないと」

 京香の毒のある言葉の意味の半分も、伶にはわからない。興信所と言われてもピンと来なかった。
京香も伶に同意の答えは求めていない。今の京香が欲しいものは、この美しい少年との時間。

「あんた、ほんと綺麗な顔してるよね。そこは父親には似ずに、美人な母親の良い遺伝子を貰ったわねぇ。10年後が楽しみ」

同じようなことを昼間のあの女にも言われた。実の母親似だとはよく言われるが、10年後のハタチの自分なんて伶は想像もしたことがない。

 京香が伶の唇に自分の唇を重ねた。初めてではない京香とのキスを伶は必死で拒む。京香の吐く息から酒の臭いがして、頭がクラクラした。

『だからこういうことはもう……』
「ホントに嫌?」

湯船の中で感じた下半身の違和感に伶は眉をひそめる。キスをされながらその部分に触れられて、伶の頭と身体はパニックに陥った。

「またアレしてあげる。この前も気持ちよかったでしょ?」

 京香が湯船の中で掴んでいるのは伶の生殖器。伶の性器は湯船の中で少しずつ膨らみが増していた。

『止めてください。“お母さん”』
「こんな時にわざとお母さんって言わないの。私はあんたのママじゃない」

 彼女に導かれるまま伶は浴槽を出た。伶の傍らに京香は膝まづいて、彼の性器を口に咥えた。卑猥な音を立てて一方的にされる一連の行為に伶の喉仏がごくりと動く。

「あんた、私の裸見て精通したんでしょ? 私とあの人がセックスしてるとこ覗き見してたの、ちゃんと知ってるのよぉ」

 父親と継母の一夜を覗き見した半年前のあの夜以降、伶の身体は子どもから大人に変化した。
それから間もなく、見よう見まねに自慰の真似事をしている場面を京香に見られ、伶はその時に女の身体を知った。

ようやく陰毛が生えてきた伶のソコを、初めて見た異性が京香だ。
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