今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「はい」

『紅羽ちゃん? 俺、誠』

電話だといつもより声が低く聞こえて耳がくすぐったい。

「あ、うん。昨日はどうも…お世話様…」

『くくく。お世話様』

なんなのお世話様って。

「どうしたの?」

『メール担当者から行ってない?』

来てますね。
バッチリ。

「…来てる。ちょうど見たところだった」

『ちょっと会えないかな?』

「あー…」

なんて言って断ろう。
会ってしまったらダメだよ…

『ごめん紅羽ちゃん…』

「もう来ちゃったわ」

電話からではなく、後ろから声がして振り返ればなんと携帯を片手に持ったまま手をヒラヒラさせた誠がアトリエに入ってきていた。

「ちょっ…ちょっと!」

ついさっき誘われても会わないと決めたばかりだったのに…

「ははは。紅羽ちゃん、お疲れ様」

誠は爽やかに笑顔を向けてくる。
そして私の元まで来ると流れるように抱きしめられ、キスをされた。
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