今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「あれはマッシュカットだよ」

そう言ってムッとした顔をする誠。

「いやわかるけどさ」

「確かに坊ちゃんではあったな」

「ははは。だから。私ぜんっぜん気づかなかったもん」

「まぁ10年も経てば変わるさ」

確かにね。
私も変わったし。

「でもあの時の子が紅羽ちゃんだってわかってからはやっぱり同じ子だって今ならわかる」

私も…
今ならわかるよ。
どうしてこんなにデザイン画を見ただけでインスピレーションが浮かんで止まらなくなるのか。

誠のデザイン画だったからだ。

「紅羽ちゃんがあの時の子で良かった…」

なんで…

「好きだよ、紅羽」

誠は私を見上げて本当に愛おしそうにそう言って微笑んだ。

もう…無理だ。
こんなにも真っ直ぐに気持ちを伝えられたら…

「わた…」

その時ドアの向こうでノックがされて私は慌てて誠の上から飛び降りた。

しかも私もって言おうとしてしまったし。
つい顔が熱くほてる。
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