君との恋は面倒すぎる
 翌日の昼休み


「───り。…日和」


 どうやってあの空き教室に来たかも分からないまま、気付いたら空き教室にいた。名前を呼んでいたのは蒼空くんで、ちょうど今来たのか私の肩を叩いていた。


「…あ、ごめん。ぼーっとしてた」


 そう言って少し笑って「はい、今日のお弁当」と言って渡すと「…ありがとう」と私の様子に疑問を持ったまま、弁当を受け取る。


「大丈夫?体調悪いの?」

「いや、違うよ。考え事してて…」


 誤魔化そうとしても、こんなので蒼空くんが誤魔化されてくれるわけないのは、私が一番よく知ってる。

 こちらを黙って見てくる蒼空くんに観念して、重たい口を開く事にした。反応が怖いけれど、どうせこの先隠せ通せないし、蒼空くんがもし予想に反して「行くな」って言ってくれたら…、なんてそんな淡い期待をしていた。

 昨日、三者面談で先生に遠方の短期大学を勧められたこと、父には案の定自分の人生を恋人で決めるような事はするなと言われた事、私は地元で就職するなら、地元の短期大学に行った方がいいと思っていること、全てを包み隠さず話した。

 蒼空くんはその間口を挟むことなく黙って聞いてくれていた。


「…俺は、行った方がいいと思う」


 蒼空くんはそう言うと思っていた。わかっていた。

 だけど、私はどうしても納得がいかなかった。

 このまま離れることに不安はないのか、それでいいのか。


「で、でも、遠距離になるんだよ!?簡単には会える距離じゃなくなるし、別にそんなに遠くへ行かなくても地元の短期大学でも夢は追いかけられるわけだし」

「…その言い方、最初から俺を理由に遠方の大学を断ろうと思ってたんでしょ」


 蒼空くんにいつもより少し低い声で言われた言葉は図星で方が揺れた。断る理由をいつしか蒼空くんに押し付けようとしていたのだと思う、私が離れたくなかったから。


「…本当だ。ごめん。最低なことした、私」


 そんなの蒼空くんがいい気をしないことは分かっていた。

 でも私、蒼空くんと離れたくない。
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