君との恋は面倒すぎる
 しばらく待っていると、蒼空くんが髪をバスタオルで拭きながら部屋に戻ってくる。

 お風呂上がり…!色気爆発してませんか…!

 普段見ることのない姿に照れくさくなってくる。


「おかえり」

「ん」


 そう短く返事をすると、蒼空くんが窓の方に向かう。


「日和、おいで」


 手招きする蒼空くんのもとに向かうと、窓の外の景色を見せてくれる。

 ライトアップされた赤レンガ倉庫や夜の港がすごく綺麗だった。


「すごい綺麗!」


 感動しながら見ていた景色から、隣にいる蒼空くんの方に視線を移すと、そんな彼の横顔も照らされ、すごく綺麗で見惚れる。

 ずっと見ていると、蒼空くんは私に視線をやり、「楽しかった?今日」と問いかけてくる。


「すごく楽しかった、蒼空くんは?」

「楽しかったよ」


 そう言ってすごく優しい笑みを零してくれるからまた目が離せなくなって、見れば見るほど彼に惹かれていく。


「てかそろそろくん付けやめない?」

「え」


 蒼空くんの言葉の意図が分からなくて、首を傾げる。


「蒼空って呼んでみて」

「えええええ!無理!」


 そんな拒絶反応を示すと、蒼空くんの眉間に皺が寄る。


「そこまで無理って言う?」

「だって、ずっと蒼空くんだったし、今からは難しいよ…」

「俺が日和なのに君がくん付けで呼ぶのは変でしょ」


 そう言われてしまえば確かにそうなんだけど…。

 どうしても急に名前の呼び方を変えるのは照れ臭くて、抵抗がある。


「蒼空、呼んでみ」


 そう言って顔を寄せてこられて、なおさら無理。

 張り付く喉を必死に開くも「そ…」と、蚊が鳴くような声しか出ず、顔の熱を耐えながら必死に名前を呼ぼうと挑戦する。


「そ、ら…………くん」


 名前を呼ぶと蒼空くんは少し驚いた顔をして、その後反対方向を向いて口元を隠して笑っている。
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