龍神島の花嫁綺譚
「これから東の邸宅に行くところです。それでは」
「は、東ぃ?」
会釈して逃げようとすると、紅牙の瞳孔がカッと開いた。
「蒼樹のところに何しに行くんだ? まさか、あいつに囲われるつもりか?」
さっきまでとうってかわって、紅牙の声がものすごく不機嫌になる。
「いえ。今日の残り物の米をもらいに行くだけです」
「米? 食べ物に不自由してるのか? それなら俺のところで面倒見てやるよ」
そう言うと、紅牙が陽葉をひょいっと肩に担ぎ上げる。その拍子に、手からお櫃が転がり落ちた。
「だ、大丈夫です。おろしてください。私はここで何も不自由はしていないので……」
「遠慮しないでいい。おまえは少し軽すぎる。俺のところにくれば、米だって肉だって好きなだけ食わせてやれるぞ」
ジタバタする陽葉を担いで、紅牙が西の邸宅を出ようとしたとき。
バシンッ。
あたりに、ものすごい音が響いた。
「ねえ、紅牙。誘拐って言葉知ってる?」
回れ右した紅牙と、その肩の上で目を見開く陽葉の前には邸宅の戸にもたれかかる黄怜の姿。
にっこりと口端を引き上げて首をかしげているが、怖いくらいに目が座っている。
「は、東ぃ?」
会釈して逃げようとすると、紅牙の瞳孔がカッと開いた。
「蒼樹のところに何しに行くんだ? まさか、あいつに囲われるつもりか?」
さっきまでとうってかわって、紅牙の声がものすごく不機嫌になる。
「いえ。今日の残り物の米をもらいに行くだけです」
「米? 食べ物に不自由してるのか? それなら俺のところで面倒見てやるよ」
そう言うと、紅牙が陽葉をひょいっと肩に担ぎ上げる。その拍子に、手からお櫃が転がり落ちた。
「だ、大丈夫です。おろしてください。私はここで何も不自由はしていないので……」
「遠慮しないでいい。おまえは少し軽すぎる。俺のところにくれば、米だって肉だって好きなだけ食わせてやれるぞ」
ジタバタする陽葉を担いで、紅牙が西の邸宅を出ようとしたとき。
バシンッ。
あたりに、ものすごい音が響いた。
「ねえ、紅牙。誘拐って言葉知ってる?」
回れ右した紅牙と、その肩の上で目を見開く陽葉の前には邸宅の戸にもたれかかる黄怜の姿。
にっこりと口端を引き上げて首をかしげているが、怖いくらいに目が座っている。