龍神島の花嫁綺譚
「それが、無理じゃないのよ」
おもわず顔をしかめた陽葉に、志津が不敵に微笑む。
「朔の日まで待たなくても、夕凪の刻になれば龍神島の周りの海が凪ぐ」
「夕凪の刻に?」
「そうよ。地平線に太陽が沈んだあとのほんの一瞬。急いで舟を漕いで島を出ることさえできたら、あとはなんとかなるわ」
ほんとうにそんなことができるのだろうか。
「でも、舟は……?」
「入り江の洞窟に、花嫁を人里に帰すための舟が隠してあるわ。洞窟には二つの道があって、陽葉は右を通ってここに連れてこられたはず。船が置いてあるのは、左の道の奥。このまま、洞窟に潜んで夕凪の刻を待ちなさい。そうすればあなたは……」
不安を隠せない陽葉に、志津が説明を続ける。だが……。
「志津様、裏切った」
「蒼樹様に知らせなくては」
「新入り花嫁が逃げてしまう」
途中で、下がらせたはずのあやかし三人組の声がした。ハッとして見ると、閉めたはずの台所の戸が少し開いている。その隙間から、ギラリと光る目が覗いていた。
「あなたたち……」
陽葉と志津と目が合うと、あやかし三人組がダダッとどこかへ駆けていく。
彼女たちの背中を数秒見つめた後、志津は台所の外へと陽葉の肩を押しやった。
おもわず顔をしかめた陽葉に、志津が不敵に微笑む。
「朔の日まで待たなくても、夕凪の刻になれば龍神島の周りの海が凪ぐ」
「夕凪の刻に?」
「そうよ。地平線に太陽が沈んだあとのほんの一瞬。急いで舟を漕いで島を出ることさえできたら、あとはなんとかなるわ」
ほんとうにそんなことができるのだろうか。
「でも、舟は……?」
「入り江の洞窟に、花嫁を人里に帰すための舟が隠してあるわ。洞窟には二つの道があって、陽葉は右を通ってここに連れてこられたはず。船が置いてあるのは、左の道の奥。このまま、洞窟に潜んで夕凪の刻を待ちなさい。そうすればあなたは……」
不安を隠せない陽葉に、志津が説明を続ける。だが……。
「志津様、裏切った」
「蒼樹様に知らせなくては」
「新入り花嫁が逃げてしまう」
途中で、下がらせたはずのあやかし三人組の声がした。ハッとして見ると、閉めたはずの台所の戸が少し開いている。その隙間から、ギラリと光る目が覗いていた。
「あなたたち……」
陽葉と志津と目が合うと、あやかし三人組がダダッとどこかへ駆けていく。
彼女たちの背中を数秒見つめた後、志津は台所の外へと陽葉の肩を押しやった。