【漫画シナリオ】きみの魔法に恋は絡まる
第7話
○場所:公園のベンチ
隣同士で座っている二人。
とっくに日が暮れて暗くなっている。
羽花(あの人、絶対面白がってた……)
(今ごろ笑い転げているに違いない……)
来栖先輩の顔を思い出してげっそりする羽花。
ひとまず来栖先輩のことは忘れ、黙っている希一へと視線を移す。
羽花「あの……希一くん」
希一「……」
羽花「来栖先輩、一応年上なのに、なんであんなこと言ったの?」
希一「むかついたから」
羽花(おおぅ、正直……)
来栖先輩への敵意がむき出しの希一に頬をひきつらせる羽花。
→だが、ちょっとだけ嬉しくもなる。
→(もしかしてヤキモチ?)と考えてそわそわ。
羽花「ええと、むかついたって……なんで……」
希一「……」
羽花(こ、答えてよ! なんで黙るの、気になるでしょ!)
それとなくたずねるものの、黙って俯き、何も言わない希一。
→なんとなく空気が重くなるが、羽花の心臓はドキドキしている。
羽花(……希一くん、来栖先輩のこと、男の人だと思ってるんだよね?)
(それでわたしと来栖先輩がくっついてたことにむかついたってことは、やっぱり……あれ? そういうこと?)
(ていうか、あの時、『羽花』って呼んだ? 呼んだよね? そ、それも、もしかして……)
(いやいや……! そんなわけない! 自意識過剰だってば!)
もしかして希一くん、わたしのこと気になってるのかも? みたいに考えて、だんだん頬が熱くなる。
→希一はまだ不機嫌そうな顔。
希一「……あのさ、イヤじゃないわけ?」
羽花「……へっ!? な、何が!?」
希一「アイツにひっつかれても、抵抗してなかったじゃん。普通、好きでもない男にくっつかれたらイヤだろ」
羽花(ああっ、男って言った! 本当だ! 完全に来栖先輩のこと男の人だと思ってる!!)
はっきり〝男〟と言い放った希一に対し、羽花は苦笑い。
どこから説明したものか考えつつ、「えーと……」と口を開く。
羽花「わ、わたし、別にイヤじゃなかったよ。くっつかれても」
希一「……は」
羽花「だってね、そもそも来栖先輩は──」
希一「じゃあさ、俺がくっついてもイヤじゃないの」
羽花「へ……」
説明する前に遮られ、希一の手が羽花を掴む。
羽花「あぇ?」
──ぽすっ。
→引き寄せて抱きしめる。
→そのまま肩口に頭を埋める。
羽花は硬直。
羽花「……!?!?!?」
固まる羽花。
希一は黙って、羽花を抱きしめたまま。
羽花(ええええ!! 何この状況!?)
希一「髪……」
羽花「は、はいっ!?」
希一「……いい匂いする」
すん、と鼻を押し付け、希一がさらに身を寄せてくる。
羽花、緊張で顔が真っ赤に。
羽花(ひ、ひい……っ、ど、どうしよ、心臓が飛び出る……っ!)
(希一くん、違うの、誤解なの! 来栖先輩は女の人なのに! なんでこんなことに!? わ、わたしはどうしたら……!)
希一「なあ」
羽花「は、はい……!」
希一「……イヤじゃねーの、くっつかれてんの」
目を回す勢いでテンパる羽花。
ぽつりと問いかける希一。
羽花は息をのみつつ、真っ赤な顔で答える。
羽花「……う、うん……イヤじゃ、ない……けど……」
希一「けど?」
羽花「あの……希一くん、多分、ものすごい勘違いしてて……」
希一「は? 勘違いって?」
羽花「来栖先輩のことなんだけど……」
来栖先輩の名前を出すと、希一は露骨にイヤそうな顔をする。
希一「……俺、あんまその名前聞きたくない」
ぶすっとしたままそう言って、さらに羽花に身を寄せる。
ますます抱きしめられ、羽花は顔から火が出る勢いで真っ赤になりながら目を回す。
羽花「い、いや、あの……っ、き、聞いてもらわないと困るので……!」
希一「なんで」
羽花「き、希一くんのためにも……!」
希一「はあ? 俺のためって?」
羽花「いいから聞いて!」
希一「……分かったよ。何」
羽花「あ、あのね、来栖先輩ね、実は……」
希一「うん」
羽花「女の子なの………………っ!!」
………………。(沈黙)
しばらく希一は黙っていたが、やがてゆっくりと羽花から離れる。
→戦慄した顔で眉をひそめる。
希一「……何? 誰が?」
羽花「来栖先輩が……」
希一「その先輩が、何だって?」
羽花「女の子……」
希一「──うっそ!? マジ!?」
驚愕する希一。かなり困惑。
→羽花はようやく吐き出せて胸を撫で下ろす。
希一「は!? だってアイツ、立ったら俺と同じぐらい身長あったじゃん! 声も低いし!」
羽花「先輩、175センチあるから……」
希一「嘘だろ、俺と1センチしか変わんねえの!? つーかなんで男の制服着てたんだよ!?」
羽花「それはわたしもよくわかんないけど……多分希一くんに自分を男だと思わせて、どんな反応するか見たかっただけかも……そういう人なので……」
希一「はあぁっ!? じゃあ、待って、俺……マジで、色々勘違いして……」
自分の間違いと早とちりな行動に気がつき、カァァ、と頬を赤らめる希一。
→すぐに顔を逸らし、腕で赤くなった顔を隠す。
希一「……最悪……」
羽花「ご、ごめんね、教えるの遅くなって! まさか先輩のこと男の人だと思ってるなんて思わなかったの……!」
希一「……マジ無理……色々忘れたい……」
「つーか、俺めっちゃ暴言吐いたよな……? うーわ、ほんと最悪じゃん……」
羽花「だ、大丈夫だよ、先輩あんなの気にしてないから……! むしろああなるように自分で誘導してたし、多分……」
脳裏に『ハッハ〜』と笑う先輩の姿がよぎる。
→頬をひきつらせる羽花。
希一は赤い顔のまま、おずおずと顔を上げる。
希一「……引いた?」
羽花「え?」
希一「さっきの、俺の行動……」
バツが悪そうにたずねる。
羽花はぎこちなく目を泳がせたが、へらりと笑う。
羽花「う、ううん、全然! ほら、希一くん、わたしが危なっかしかったから危機感を持つように教えてくれたんだよね!? ありがとう、あはは……」
希一「……」
羽花「そ、そろそろ帰る? あんまり遅いと心配されちゃうし」
重い空気を打ち破るように立ち上がる。
すると、希一が羽花の腕を掴む。
希一「……待って」
羽花「?」
希一「これ、あげる」
立ち上がった希一が、羽花の手に何かをのせる。
→羽花がハンドクリームを買った店のロゴが入った箱。
中身はトイプードルのラベルがついたヘアオイル。
羽花「えっ、これ……!」
希一「……さっきの店で買った。今日のお礼」
羽花「ええ!? こんなのいつのまに──あっ」
来栖先輩と会う前、希一が『トイレに行く』と言っていなくなった時のことを思い出す。
→実はトイレではなく、希一は店に戻ってヘアオイルを買っていた。
羽花(もしかして、あの時、買いに行ってくれたの……?)
じんわりと嬉しくなる羽花。
→胸がときめく描写。
希一「本当は、もっといい感じに渡すつもりだったんだよ。……変な先輩のせいで台無しだけど」
羽花「う……迷惑かけてごめんね、ほんとに……」
希一「いや、別にそっちが悪いわけじゃないから。……ほら、帰ろ、藤村さん」
羽花(あ、名前……元の呼び方に戻ってる)
前を歩き始めた希一の背中を見つめ、羽花はほんの少し寂しく感じる。
だが、手元にあるトイプードルのヘアオイルを見下ろすと、胸がとくりと高鳴って頬が緩む。
羽花「……おそろいだね」
希一「ん?」
羽花「トイプードル」
ヘアオイルを手に持って、へにゃ、と羽花は柔らかく笑う。
振り向いた希一は羽花と目が合うと、ふいっと顔を前に戻し、「……そーだね」と言って、赤くなる耳を手で覆い隠しながら首元を掻いた。
〈第7話 終わり〉
隣同士で座っている二人。
とっくに日が暮れて暗くなっている。
羽花(あの人、絶対面白がってた……)
(今ごろ笑い転げているに違いない……)
来栖先輩の顔を思い出してげっそりする羽花。
ひとまず来栖先輩のことは忘れ、黙っている希一へと視線を移す。
羽花「あの……希一くん」
希一「……」
羽花「来栖先輩、一応年上なのに、なんであんなこと言ったの?」
希一「むかついたから」
羽花(おおぅ、正直……)
来栖先輩への敵意がむき出しの希一に頬をひきつらせる羽花。
→だが、ちょっとだけ嬉しくもなる。
→(もしかしてヤキモチ?)と考えてそわそわ。
羽花「ええと、むかついたって……なんで……」
希一「……」
羽花(こ、答えてよ! なんで黙るの、気になるでしょ!)
それとなくたずねるものの、黙って俯き、何も言わない希一。
→なんとなく空気が重くなるが、羽花の心臓はドキドキしている。
羽花(……希一くん、来栖先輩のこと、男の人だと思ってるんだよね?)
(それでわたしと来栖先輩がくっついてたことにむかついたってことは、やっぱり……あれ? そういうこと?)
(ていうか、あの時、『羽花』って呼んだ? 呼んだよね? そ、それも、もしかして……)
(いやいや……! そんなわけない! 自意識過剰だってば!)
もしかして希一くん、わたしのこと気になってるのかも? みたいに考えて、だんだん頬が熱くなる。
→希一はまだ不機嫌そうな顔。
希一「……あのさ、イヤじゃないわけ?」
羽花「……へっ!? な、何が!?」
希一「アイツにひっつかれても、抵抗してなかったじゃん。普通、好きでもない男にくっつかれたらイヤだろ」
羽花(ああっ、男って言った! 本当だ! 完全に来栖先輩のこと男の人だと思ってる!!)
はっきり〝男〟と言い放った希一に対し、羽花は苦笑い。
どこから説明したものか考えつつ、「えーと……」と口を開く。
羽花「わ、わたし、別にイヤじゃなかったよ。くっつかれても」
希一「……は」
羽花「だってね、そもそも来栖先輩は──」
希一「じゃあさ、俺がくっついてもイヤじゃないの」
羽花「へ……」
説明する前に遮られ、希一の手が羽花を掴む。
羽花「あぇ?」
──ぽすっ。
→引き寄せて抱きしめる。
→そのまま肩口に頭を埋める。
羽花は硬直。
羽花「……!?!?!?」
固まる羽花。
希一は黙って、羽花を抱きしめたまま。
羽花(ええええ!! 何この状況!?)
希一「髪……」
羽花「は、はいっ!?」
希一「……いい匂いする」
すん、と鼻を押し付け、希一がさらに身を寄せてくる。
羽花、緊張で顔が真っ赤に。
羽花(ひ、ひい……っ、ど、どうしよ、心臓が飛び出る……っ!)
(希一くん、違うの、誤解なの! 来栖先輩は女の人なのに! なんでこんなことに!? わ、わたしはどうしたら……!)
希一「なあ」
羽花「は、はい……!」
希一「……イヤじゃねーの、くっつかれてんの」
目を回す勢いでテンパる羽花。
ぽつりと問いかける希一。
羽花は息をのみつつ、真っ赤な顔で答える。
羽花「……う、うん……イヤじゃ、ない……けど……」
希一「けど?」
羽花「あの……希一くん、多分、ものすごい勘違いしてて……」
希一「は? 勘違いって?」
羽花「来栖先輩のことなんだけど……」
来栖先輩の名前を出すと、希一は露骨にイヤそうな顔をする。
希一「……俺、あんまその名前聞きたくない」
ぶすっとしたままそう言って、さらに羽花に身を寄せる。
ますます抱きしめられ、羽花は顔から火が出る勢いで真っ赤になりながら目を回す。
羽花「い、いや、あの……っ、き、聞いてもらわないと困るので……!」
希一「なんで」
羽花「き、希一くんのためにも……!」
希一「はあ? 俺のためって?」
羽花「いいから聞いて!」
希一「……分かったよ。何」
羽花「あ、あのね、来栖先輩ね、実は……」
希一「うん」
羽花「女の子なの………………っ!!」
………………。(沈黙)
しばらく希一は黙っていたが、やがてゆっくりと羽花から離れる。
→戦慄した顔で眉をひそめる。
希一「……何? 誰が?」
羽花「来栖先輩が……」
希一「その先輩が、何だって?」
羽花「女の子……」
希一「──うっそ!? マジ!?」
驚愕する希一。かなり困惑。
→羽花はようやく吐き出せて胸を撫で下ろす。
希一「は!? だってアイツ、立ったら俺と同じぐらい身長あったじゃん! 声も低いし!」
羽花「先輩、175センチあるから……」
希一「嘘だろ、俺と1センチしか変わんねえの!? つーかなんで男の制服着てたんだよ!?」
羽花「それはわたしもよくわかんないけど……多分希一くんに自分を男だと思わせて、どんな反応するか見たかっただけかも……そういう人なので……」
希一「はあぁっ!? じゃあ、待って、俺……マジで、色々勘違いして……」
自分の間違いと早とちりな行動に気がつき、カァァ、と頬を赤らめる希一。
→すぐに顔を逸らし、腕で赤くなった顔を隠す。
希一「……最悪……」
羽花「ご、ごめんね、教えるの遅くなって! まさか先輩のこと男の人だと思ってるなんて思わなかったの……!」
希一「……マジ無理……色々忘れたい……」
「つーか、俺めっちゃ暴言吐いたよな……? うーわ、ほんと最悪じゃん……」
羽花「だ、大丈夫だよ、先輩あんなの気にしてないから……! むしろああなるように自分で誘導してたし、多分……」
脳裏に『ハッハ〜』と笑う先輩の姿がよぎる。
→頬をひきつらせる羽花。
希一は赤い顔のまま、おずおずと顔を上げる。
希一「……引いた?」
羽花「え?」
希一「さっきの、俺の行動……」
バツが悪そうにたずねる。
羽花はぎこちなく目を泳がせたが、へらりと笑う。
羽花「う、ううん、全然! ほら、希一くん、わたしが危なっかしかったから危機感を持つように教えてくれたんだよね!? ありがとう、あはは……」
希一「……」
羽花「そ、そろそろ帰る? あんまり遅いと心配されちゃうし」
重い空気を打ち破るように立ち上がる。
すると、希一が羽花の腕を掴む。
希一「……待って」
羽花「?」
希一「これ、あげる」
立ち上がった希一が、羽花の手に何かをのせる。
→羽花がハンドクリームを買った店のロゴが入った箱。
中身はトイプードルのラベルがついたヘアオイル。
羽花「えっ、これ……!」
希一「……さっきの店で買った。今日のお礼」
羽花「ええ!? こんなのいつのまに──あっ」
来栖先輩と会う前、希一が『トイレに行く』と言っていなくなった時のことを思い出す。
→実はトイレではなく、希一は店に戻ってヘアオイルを買っていた。
羽花(もしかして、あの時、買いに行ってくれたの……?)
じんわりと嬉しくなる羽花。
→胸がときめく描写。
希一「本当は、もっといい感じに渡すつもりだったんだよ。……変な先輩のせいで台無しだけど」
羽花「う……迷惑かけてごめんね、ほんとに……」
希一「いや、別にそっちが悪いわけじゃないから。……ほら、帰ろ、藤村さん」
羽花(あ、名前……元の呼び方に戻ってる)
前を歩き始めた希一の背中を見つめ、羽花はほんの少し寂しく感じる。
だが、手元にあるトイプードルのヘアオイルを見下ろすと、胸がとくりと高鳴って頬が緩む。
羽花「……おそろいだね」
希一「ん?」
羽花「トイプードル」
ヘアオイルを手に持って、へにゃ、と羽花は柔らかく笑う。
振り向いた希一は羽花と目が合うと、ふいっと顔を前に戻し、「……そーだね」と言って、赤くなる耳を手で覆い隠しながら首元を掻いた。
〈第7話 終わり〉