Dearest 1st 〜Dream〜
「……それでそんな傷だらけに……
チカちゃん大変だったね…」
いきさつを話し終えれば、
吾郎はチカをいたわるような目で見つめながらそう話しかけた。
「そんな酷い事するヤツもいるんだね!!
何か超腹立つそいつ!」
壱は怒りながらチカに肉を勧めている。
「……チカ、何か困った事あったら何でもいいなよ。
あたしも出来るだけ力になるからさ。」
マリアのその言葉を聞くと、チカはコクンと小さく頷いた。
「……みんな……
ごめんね…
それと……
ありがとう……」
チカの精一杯の今までの謝罪と感謝の気持ちだったんだろう。
こんなに姿勢が低いチカは初めてだったし、俺も見た事がなかった。
「何や今さら辛気くさい♪
ほらチカ!食え食えっ♪」
俺達は笑ってチカの皿に肉を入れまくった。
ほんの少し……
チカは穏やかに笑って、箸に手を付けた。
──…チカを連れてきて良かった。
この時俺は、心底チカの笑顔を取り戻したいと思った。
少しだけど……
今までとてつもなく離れた心の距離が縮まった気がした。
今まで逃げていたチカとも向き合う事─…
思えばこれも彩を好きになってから訪れた変化だった。
一人の人を好きになったからこそ、
目の前にいる傷ついた人間の痛みや辛さを無視出来なくなった。
──…もし
もし逆に自分が辛くて悲しくて立ち上がれない状態だとしたら?
そんな時に手を差し伸べてくれる人が誰か一人いるだけで、どれだけ救われるか。
だからこそ、チカにもちゃんと分かって欲しかった。
一人じゃないんだと。