Dearest 1st 〜Dream〜
「……ありがと…」
俺は静かに笑って頷いた。
彩はそのまま笑顔で、ぶんがいる場所へと走って行く。
二人が抱き合う姿を見て、ふいに笑顔と涙が同時に出ている事に気付いた。
───俺は負けだ。
彩があんなに涙する表情も、
次の瞬間とびきりの笑顔で笑う表情も、
───俺には出来ない。
くるりと二人の姿に背を向け、俺は一歩一歩地を踏みしめて歩き出した。
そして悟った。
俺の役目は終わったんだと。
あの子にはもう守ってもらうべく人がいる。
もう一人じゃない。
そう思えば未だこの胸は寂しさに軋むけど、
これは確かに俺が望んだ未来だ。
彩の幸せを一番に優先させた“今”だ。
描いた未来に俺は立つことは出来なかったけれど──…
“守る”
その意味を
俺は知った。