高貴な財閥夫婦の秘密
食事後、結局那留に車で送ってもらっている梨良。
助手席から那留を見つめていた。

「………なんだよ(笑)」

「え?あ、ご、ごめんね!」

「いや、だから何?」

「那留くんのこと、一番好きになれたら良いのになって考えてたの」 

「あ、あぁ(笑)そうだな!」

「………」

「………梨良?」

「…………どうしてかな?」

「ん?」

「どうして“自分の気持ちなのに”感情をコントロール出来ないのかな?
どうして、知くんじゃなきゃダメなのかな?
那留くんのこと好きだけど、抱き締めてほしいのも、キスしたいのも、それ以上のことも……知くんじゃないとダメなの!」

「そうだな……
理屈じゃねぇもんな……」

「知くんが隠岐原だったら良かった……」

「…………そうだな」 

「……って、ごめんなさい。
こんなこと言っても、何も変わらないのに」

「覚悟はしてたが、結構辛いよな……」

「うん…」

「周りの人間からすれば、些細な言葉なんだろうが……
俺達からすれば、結構グサッと刺さる…(笑)」

「みんな、事情なんて知らないしね…」

「美奈といれれば良いなんて言っておいて、結局認められることを望んでる。
俺は“美奈の”男だって……!」


そして――――――

知嗣、那留、美奈が仕事から帰ってきた。
だいたい三人は、同じくらいに帰ってくる。

「「「ただいま!」」」

「………」
やけに、シン…としている。
いつもなら、梨良が嬉しそうに駆け寄ってくる。

「梨良ー!」

「梨良、どうしたのかな?」
「さぁ?」

三人とも首を傾げながら、リビングのドアを開け入った。

「梨良!」

梨良は、ソファに座り俯いていた。
そして知嗣が声をかけると、ビクッと身体を震わせた。

「あ…お、おかえりなさい!
電話、気づかなくてごめんね!」
スマホを見ていたようで、慌てて切り、知嗣に駆け寄る。
そして、抱きついた。

知嗣の腕の中から、知嗣の後ろにいた那留と美奈にも声をかけた。

「那留くんと、美奈さんもおかえりなさい!」

「あぁ」
「ただいま!」

「梨良、どうしたの?」

「え?」

「誰かと連絡してたとか?」

「ううん!
ちょっと、色々見てたの」

「色々?」

「あ、色々ってゆうか、その…大したことないよ?」

目が泳いでいる梨良。
そんな梨良に、知嗣が「ネット、見たんだね?」と言った。

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