高貴な財閥夫婦の秘密
「………あれ?梨良!!」

梨良が買い物後、ゆっくり屋敷に戻っていると後ろから呼ばれた。

声の方を振り向くと、那留が微笑み近づいてきた。

「那留くん!」

「何やってんの?」

「お買い物に…」

「そうか。
家まで送ろうか?」

「え!?そんな悪いし…
大丈夫!ありがとう!」

「………」

「………あ、じゃ、じゃあ行くね!」

「梨良!」
小さく手を振り行こうとする梨良を呼び止める。

「ん?」

「気、遣うなっつってるよな?」

「遣ってないよ?」

「………」

「ほんとだよ?」

「………梨良、飯は?」

「え?まだだよ?」

「一緒にどう?」

「え?でも……」
(美奈さんに悪いしな…)

「美奈に気を遣うなよ?」

まるで見透かしたように言ってくる那留に、梨良は一度目を見開いて、少し困ったように頷いた。


イタ飯店に向かった。
注文しサラダが来て、梨良が小分けする。

「はい!」
「ん、ありがと」

サラダを食べていると………

「ねぇ、あそこにいるの、隠岐原夫婦だよね!?」
「え?あ、ほんとだ!」
「二人とも、綺麗ー//////」

近くにいた女性客が話しているのが聞こえてきた。
こっそり話しているのだろうが、那留と梨良の耳に入ってくる。

「こんな平日まで、わざわざ二人で食事するんだね!」
「仲良いよね〜」

「でもさ、今日は二人なんだね!」
「え?」

「ほら、いつもだいたい四人でいるじゃん!
親友夫婦?と一緒に!」

「あー!
でもほら!今日は普通の平日だし!
さすがに四人ではないんじゃない?」

「そうだよね(笑)
てか!隠岐原夫婦と親友だなんていいなぁ~」
「だよね~!
羨ましい〜!!」

「………」
切なく瞳を揺らす、梨良。 

那留が元気づけるように微笑み「ここ、女ばっかだな(笑)」と言った。

「え?あ…そうだね……(笑)」

「でも女が食べるにしては、一品一品の量多くね?」

「あ…あぁ…(笑)
シェアするには良いよ?」

「シェア…な…(笑)
俺は、一人で好きなもんをがっつり食いたい!!」

「フフ…そうだよね…(笑)」

「………」
微笑んで、真剣な眼差しになる那留。

「………」

「…………梨良」

「ん?」

「周りなんて、気にすんな……!」

「え?」

「“大事なのは梨良の心”
…………だろ?」

「那留くん…
…………うん!そうだよね!」

那留の力強い視線と言葉に、梨良も力強く頷いた。


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