高貴な財閥夫婦の秘密
「――――梨良」

「んー?
待って、充電中だからこのままお話しよ?」

自宅に帰り着き、買ってきた物を整理した知嗣と梨良。

そしてソファに座った知嗣の膝に跨り、抱きついている梨良。
知嗣の肩に顔を埋めて、頬を擦り寄せていた。

「美奈もあんな風に言ってくれてるし、お言葉に甘えよ?」

まだ、グチグチ言っている自分がみっともないのはわかっている。

「大丈夫だって!」

「いや、そうじゃなくて!!」
グイっと、強引に向き直させられた。

どうしても、受け入れられない。
“美奈の夫”として接するのは、最低限の所のみでいい。
それ以外はこの聖域のような家の中に籠もって、ただ梨良と二人で過ごしたい。

「え……知くん?」

「“僕が”嫌なんだ!!」

「え?」

「土日は、梨良と一日中一緒にいたい…!
今日みたいに四人での買い物なら、受け入れられる。
でも、離れるのは嫌なんだ!」

「知くん…」

「嫌だよ。
せっかくの休みなのに、梨良と離れるなんて!」

「でも、美奈さんに恥をかかせたくない!」

「………」

「“美奈さんの旦那さんは、知くんでしょ?”」

「……!!!?」
徹底的な一言を言われ、知嗣は目を見開き「わかった」と静かに頷いて、梨良を抱き上げた。

寝室に向かいながら「じゃあ、僕も“梨良を充電させて”」と言い、ベッドに組み敷いた。

梨良にキスを落とし、服を脱がせていく。

「ちょ…待って…!」

「どうして?」

「す、スるの?
こんな明るいうちから」

「そうだよ。
まさか“たかがハグ程度で”僕が満足すると思ってるの?
そんな程度で充電なんて、僕の梨良への愛情は梨良みたいに可愛いもんじゃない」

「知く…/////」

「梨良は“僕のモノ”って実感したいから、キスマーク沢山付けさせてね?」

梨良が壊れてしまえばいい。
そうすれば、この部屋に閉じ込めて、誰にも、那留にも会わせず僕だけが梨良を独占できる……!

この日梨良は、一晩中知嗣に抱かれたのだった。


「―――――梨良らしくないね…」

一方の那留と美奈。

ソファに並んだ座り、那留が美奈の腰を抱いている。
そんな中、ポツリと言った美奈。

「そうだな。
……………つか、お前は良いの?」

「え?」

「一人で行くっつってたじゃん」

「でも、知嗣さんが来てくれるなら助かる!
かなりしつこかったから」

「ふーん…」

「…………那留?」

「あ?なんだよ」

「怒ってるの?」

「別に怒ってねぇよ」

「でも、怖いよ」

「怒ってるっつうか…胸くそはわりぃな、確かに」

そう言って那留は、ソファに美奈を押し倒した。

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