The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
あのときは、ルルシー殿にくっついているだけで、特に害もなかった。

しかし…今目の前にいるこの男と、あのときの男が同一人物だとは思えない。

ルレイア・ティシェリーという人間を侮っていたツケが、今になって回ってきたのだ。

「…マフィアを舐めるなよ、ガキ」

「ぐっ…うぅ…」

このまま殺されてしまうのかと思った。

でも…何故、俺が『青薔薇連合会』に殺されなければいけないのかは分からなかった。

ルレイア殿が何故ここまで殺気立っているのかも。

俺には、全く見に覚えがなかった。

「…俺のルルシーに手を出したのは、お前か」

「…?」

俺の…ルルシー?

手を出した、って…。

一体何のことだ、と聞きたかったが、首をがっちりと掴まれているから、上手く声を出せなかった。

声を出したくてもがいていると、ルレイア殿が少しだけ手を緩めてくれた。

「お前が指示して、ルルシーを傷つけたのか」

「な…何のことだ?俺は、何も…」

何も知らない、そう言おうとしたが…その前に、また首を強く締め上げられた。

「…あんまり俺を怒らせるなよ。その気になれば…貴様も、貴様の組織も国も…全員血祭りに上げてやれるんだからな」

「ぐ…っ…」

「もう一度チャンスをやろう。言え。俺のルルシーを傷つけたのはお前か?」

首を絞める手が、僅かに緩んだ。

言うべき言葉を間違えれば、次の瞬間には血飛沫が舞っていることは分かっていた。

俺は何も知らない。ルレイア殿を怒らせるようなことは…何もしていないはずなのだ。

だから、それを伝えれば良いのだ。

でも…「何のことか」と言っても駄目だ。何故だかは分からないけど、彼は「ルルシー殿を傷つけたのはルアリスだ」と思い込んでいる。

この様子では、何の根拠もなく否定しても、信じてもらえる見込みはない。

詳しい事情は分からないが…恐らく、彼のルルシー殿の身に何かあったのだろう。

そしてルレイア殿はその犯人を、俺達だと思ってる。

でも俺達は何もしていない。何も知らない。

それどころか、俺達もまた被害者なのだ。憲兵局の秘密部隊に狙われてる。

もしかして…ルルシー殿を傷つけた犯人というのは。

「…」

俺は生唾を飲み込んだ。もし俺の仮説が間違っていたら、俺の命はないだろう。

でもこのまま否定し続けたって…どっちにしても殺されるのなら。

なんとか…荒ぶるルレイア殿の怒りを鎮めることを考えるべきだ。
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