The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「俺は、平和的交渉を望む、という憲兵局の詭弁を信じてここに来た。だからルレイア殿のことも信じる。それで裏切られたとしても…俺が、その程度の人間だったということだ」

俺は器じゃなかった。それだけの話だ。

ルレイア殿を憎みはしない。

彼も彼なりに…そうせざるを得ない理由があるのだろうから。

「俺は革命軍のリーダーだから…。祖国の平和を体現する立場だから…。誰に何と言われようと綺麗事を言い続ける。仲間を信じる…。ルレイア殿のことも」

「…」

「それにルレイア殿は、俺がここに戻ると言ったとき…説得してくれたんだ。俺のことを多少なりとも思ってるから、止めようとしてくれたんだと思う」

最終的には…呆れられて、好きにしろと言われたけど。

でもあれは、ルレイア殿の優しさだと思っている。

甘いことを言っている自覚はある。でも俺は…信じようと思う。

あの悪魔。死神と呼ばれようとも。

ルレイア殿もまた…俺の味方だ。

「あなたの忠告は有り難く受ける…。でも、ルレイア殿と手を切ったりはしない…。大体そんなことをしたら、革命は成功しない」

俺達だけでは結局、戦力不足なんだから。

『青薔薇連合会』に頼るしかないのだ。

「…」

カセイ殿は、無言で視線を逸らした。

…我ながら、危険なことをしているものだな。

忘れているのかもしれないが、今この場で俺の生殺与奪を握っているのはカセイ殿なのだ。

俺が、ルレイア殿と手を切らない、と言い張れば…じゃあ死ね、と言われてもおかしくない。

自分の保身を考えるなら、ここは嘘でも、カセイ殿の忠告を素直に聞いておくべきだ。

我ながら、世渡りが下手だな。

今更だけど。

「…そう。そこまで言うのなら…もう止めない」

有り難いことに、カセイ殿は逆上して俺を撃ち殺そうとはしなかった。

「でもこれだけは聞かせて欲しい…。ルレイア・ティシェリーは、何の為にお前と組んだ?」

「…俺と組んだというよりは…単に、利害が一致しただけだ。ルレイア殿は憲兵局に恨みがある。それを晴らしたいだけだと思う」

それ以外の目的があるとは思えない。

何なら、俺達にしたように…単身真っ正面から憲兵局に挑みかねない勢いだったし。

「…それでも私は、あの男を信用しない」

「…」

カセイ殿の憎しみの深さを思えば、彼女がそう言うのも無理はないが…。

カセイ殿は憂いを帯びた表情で溜め息を漏らし、それからこちらを振り向いた。

「…それで、お前達の革命軍のことだが」

俺にとっては、これからが話の本題だった。
< 271 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop