The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
数時間後。

休息を取った俺は、『青薔薇連合会』を訪ねた。

ルレイア殿は…俺を見て、どんな反応をするだろうな。

珍しく、少しは驚いてくれるだろうか。

あの人多分、俺のこと死んでると思ってるだろうからな。

実はまだ生きてたと知ったら、驚くかもしれない。

ルレイア殿に…カセイ殿の話をしないように気を付けなくては。

彼がどんな反応をするかと、ちょっとドキドキしながら彼のもとを訪ねた。

すると。

「…?」

俺が会いに行ったとき、ルレイア殿はいつも通り、ルルシー殿の執務室にいた。

しかも今日は、ルレイア殿の他にも、三人の幹部達が集結していた。

更に…今日のルレイア殿は何故か…薄いピンク色の、細長いスティックみたいなものを咥えていた。

…何だあれ?

「ルレイア殿…あの、お久し振りです」

挨拶すると、ルレイア殿は、

「あぁ、ルアリスさんじゃないですか…。丁度良かった。これ、アシスファルトにいるルルシーの部下が送ってくれたんです。アシスファルト名産の砂糖を使った、添加物未使用のスティックキャンディです。舐めます?」

「え?あ、えぇ…はぁ」

「どうぞ」

「どうも…」

…飴、もらってしまった。

何で?再会の記念にキャンディ、ってこと?

試しにぺろり、と舐めてみる。美味しい。

「甘いものってそんなに得意じゃないんだけど、アシスファルト産のキャンディは甘さ控えめで美味しいね」

「えぇ、色とりどりで綺麗だし…本当に美味しい」

飴を舐めながら和やかに会話する、『青薔薇連合会』の幹部達。

これが…ルティス帝国最大のマフィアの日常なのか。

と言うか…俺が思っていた反応とは違うのだが?

ルレイア殿…。俺が生きていることに気づいてないとでも言うのか。

ただでさえ、ルレイア殿の顔を見ると…カセイ殿のあの、憎しみのこもった目を思い出してしまうのに…。

こんなに反応が薄いと、困ってしまうのだが。

「あの、俺…」

箱庭帝国から戻ってきたんですよ、と言おうとしたのだが。

「しっかしあれだな、ルレ公。ルレ公の飴の舐め方、超エロい!やっぱりプロは違うな」

いきなり何を言い出すんですか。アリューシャ殿。

飴、噴き出すところだったじゃないか。

「うふふ、ありがとうございますアリューシャ。でも…これに関しては、俺はまだまだですよ」

「へ?そなの?」

「そうです。このテクに関しては…俺の下僕の方が段違いで上手いです。俺がしっかりと…身体で仕込んであげましたからね」

「成程。さすがルレ公!悪魔だなお前!」

「うふふ」

「…」

…こういう会話をされると、俺としては何も言えない。

下僕って。

「良かったらアリューシャにも…仕込んであげましょうか?」

ルレイア殿は、キャンディをいやらしく舌でツーっと舐め、際どい上目使いでそう言った。

怖っ。

「ふひぇあばばばばばば。アイ公助けて!アリューシャ仕込まれちゃう!飴舐めるの超上手くなっちゃう!」

「はいはい、大丈夫だからアリューシャ落ち着いて」

手慣れた様子で、アイズ殿はアリューシャ殿を庇ってあげていた。

何と言うか…平和そうで、良かった。

こんな平和な会話をしているのに、俺が変なこと言って空気を悪くしたくないので…もう黙っておこうかな、と。

そう思ったとき。

「…ん?そういえばルアリス…あなた生きてたんですか?」

飴を咥えたまま、今初めて気づきましたみたいな顔で、ルレイア殿が振り向いた。

…気づいたのは、今なのか。
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