The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
その翌日から、俺はフューニャの荷造りを手伝ってやった。

慣れてないと大変だが、俺は海外に出張することも多いので、この手の準備は慣れたもの。

里帰りを控えて、フューニャも嬉しそうだった。

彼女が嬉しそうなのは俺も嬉しいのだが。

何と言うか…ちょっと、複雑な思いだ。




「…失礼します、ルルシーさん。これ…頼まれてた資料です」

「…ん?あぁ…ルヴィア…」

その日、上司であるルルシーさんの執務室を尋ねると。

ルルシーさんは、沈んだ顔でパソコンをカタカタしていた。

そのルルシーさんの横で、鼻唄混じりのルレイアさんが爪にマニキュアを塗っていた。

彼はいつでも元気そうだ。

「ルルシーさん…浮かない顔ですね…」

「そうか…?最近、色々心労が多いからかな」

無理もなかろう。最近新しい幹部が就任し、誰かと思えばルレイアさんを撃ったという暗殺者。

アシュトーリアさんもルレイアさんも、考えがあってそんなことをしたのだろうけど。

ルルシーさんにとって、ルレイアさんを撃った人と仲良くするなんて、苦痛でしかないことだろう。

気の毒な。

「…しかし、ルヴィア。お前も浮かない顔だな」

「え…そうですか…?」

「あぁ…俺と同じ顔してるぞ」

「…」

「…」

浮かない顔をした、上司と部下。

これは大変宜しくない労働環境だ。

違う。労働環境が悪い訳じゃない。

あくまでこれは、俺の個人的な問題なのだ。

「奥さんと喧嘩でもしたんですか?」

マニキュアをぺたぺた塗りながら、ルレイアさんが尋ねた。

喧嘩なんて、とんでもない。

「そうじゃなくて…その…来月から嫁が、里帰りするんです」

「ほう。第一子ですか」

「…?」

…はい?

ずるっ、とずっこけたルルシーさんが、俺の代わりにルレイアさんに突っ込んでくれた。

「馬鹿、ルレイア。そういう意味じゃねぇだろ」

「そうですか?里帰りって言うからつい…。…ん?そういやお宅の嫁、箱庭帝国出身じゃなかったですか?」

「はい、そうです」

とりあえず、第一子云々は忘れよう。

「箱庭帝国に里帰りですか。よく渡航許可が降りましたね」

「あ…向こうの友達が、ルアリスに頼んでくれたそうです」

要するに、コネだ。

そうでもしなきゃ、箱庭帝国に渡るのは難しいからな。

しかし、ルレイアさんは。

「…?ルアリスって何でしたっけ、ルルシー」

「いい加減覚えてやれよ…。箱庭帝国の、元『青薔薇解放戦線』のリーダーだよ。一緒に革命しただろ」

「あ~、なんだ。革命馬鹿ですか。そういやそんな名前でしたね」

「…」

…ルレイアさん、頭が良いのに人の名前をすぐ忘れるってことは。

自分の興味がない人の名前、そもそも覚える気がないんだろうな。

「成程、それで里帰りですか」

「はい…」

「良いことじゃないですか。何が憂鬱なんですか?」

「…」

別に…憂鬱な訳ではないのだが。

何となく、こう…。

「…あ、分かった。嫁が浮気しないか心配なんですね?」

「は?」

これにはさすがの俺も、上司相手に素で反応してしまった。

そしてルルシーさんは、再度ずっこけていた。
< 437 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop