The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルルシー

──────…その日、俺は部下であるルヴィアを呼んだ。

ちょっと、頼みたい仕事があったものだから。

で、俺の相棒のルレイアは、相も変わらず俺の部屋でのんびりしていた。

お前、ルリシヤの監督はどうした。

奴から目を離すなよ。

小言を言ってやろうかと思っていたところに、ルヴィアがやって来た。

「ルルシーさん…失礼します…」

「あぁ、来てくれたかルヴィ…ア…!?」

現れたルヴィアに、俺は思わず驚愕して目を見開いた。

…ど、どうしたんだ?ルヴィアは。

「な…何かあったのか?」

「…」

ルヴィアは、苔でも生えそうなくらいどんよりと暗い顔をしていた。

前見たときより一回りは痩せているし、着ている服もよれよれだ。

ルヴィアが…俺の部下が、やつれてる。

「大丈夫か…?何があった?」

「…何も…ないです…」

地獄の底から聞こえてきそうなくらい、重い声だった。

何もない訳ないだろ。

一体誰なんだ。うちの部下をこんなにした奴は。

事と次第によっては許さんぞ。

「あれでしょ、どうせ。奥さんが実家に帰っちゃったんで、脱け殻になってんでしょ」

ルレイアが俺の横からひょいっ、と顔を出し、茶化すようにそう言った。

するとルヴィアが、雷に打たれたようにびくっ、とした。

…図星なのか。ルヴィア。

何と言うか…ある意味では平和だな、お前は。

「…最初の一週間は、何とか耐えたんです」

泣きそうになりながら、ルヴィアはそう訴えた。

「でも段々辛くなってきて…。何食べても喉を通らないし、一人で寝るのも寂しくて…。最近では、道を歩く女性が全員嫁に見え始めてきました」

重症だな。

するとルレイアが身を乗り出して、深々と頷いた。

「分かる。超分かりますよその気持ち。俺もルナニアだった頃、ルルシーロスが続いて周りの女が全員ルルシーに見えました。とりあえず、全員抱きました」

お前は本当。そういうところは抜け目ないよな。

ルヴィアに余計なことを吹き込むんじゃない。

「連絡、取ってないのか?」

「…取ってますけど…。向こうは通信体制がルティス帝国ほど整ってないので…。そう頻繁には連絡出来ませんし」

あぁ…そうなんだっけ。

それは仕方ない。ルティス帝国と比べたら、箱庭帝国はまだまだ発展途上国だからな。

「メールは一通来ましたけど…。友達と楽しそうに笑ってる写真が送られてきて…。フューニャが楽しそうなのは俺も嬉しいですけど、同時に俺は凄く寂しいです」

「…そうか」

それは…まぁ、可哀想だな。

「久々の故郷ですからね~。そりゃあ、捨ててきた夫のことなんて忘れて、楽しんでるでしょうね」

で、またルレイアがそんな余計なことを言うものだから。

ルヴィアは、ますます重い顔でずーん、と沈み込んでしまった。

こら、ルレイア。やめろ。

「そもそもお宅の嫁、帰ってきてくれれば良いですね」

「…!?」

ルヴィアは愕然としていたが、俺も驚いた。

…帰ってくる…んじゃないのか?

「故郷で仲間と一緒に暮らすのが楽しくて、もう帰ってこないかもしれませんね。ルティス帝国で専業主婦やるより、祖国の為に同郷の人と一緒に国政に携わった方が、やり甲斐があるに決まってますもんね」

「ちょ、る、ルレイア…」

これ以上はさすがに駄目だ、とルレイアを止めようとしたが。

時は既に遅く。

ルヴィアは呆然として、わなわなと肩を震わせていた。
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