The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
だって、考えてみろ。

確かに『セント・ニュクス』はルティス帝国で中堅と言える規模のマフィア。

まともに戦争したら、多少厄介な相手ではある。

けれど『セント・ニュクス』が脅威になり得るのは、そこにルリシヤがいるからに他ならない。

ルリシヤのいない『セント・ニュクス』なんて、何も怖くない。

俺は『セント・ニュクス』にどんな人間がいるのかは詳しくは知らないが、ルリシヤの桁外れの実力を見る限り、間違いなくルリシヤは『セント・ニュクス』の要と言える存在だったはず。

そのルリシヤがいなくなった『セント・ニュクス』が、何の脅威になり得る?

要をなくした扇なんて、ただのガラクタだ。

あの組織に、ルリシヤに匹敵する実力者がいるとは到底思えない。

どうやらルリシヤが『セント・ニュクス』を抜ける前は、グリーシュも含め全員、戦いにおいてはルリシヤにおんぶにだっこ状態だったようだし。

ぶっちゃけ、何で宣戦布告してきたのか理解出来ないくらい。

「別に敵を侮るつもりはありませんけど…。ルリシヤの話を聞く限り、そのグリーシュって奴、ただの馬鹿なんですよね」

「…今回ばかりは、ルレイアに同意だな」

ほら、ルルシーさえ、グリーシュを馬鹿だと思ってる。

実際奴は馬鹿だ。ルリシヤみたいな実力者を捨てたこともそうだし、ただ無秩序に組織の規模だけを大きくして、その組織をどうやって維持するかは考えていない。

馬鹿のやることだ。そんなことしても、制御出来ずにいずれ内部から破滅するだけ。

おまけに『厭世の孤塔』なんて癖のあるマフィアまで併合して。

大人しくルリシヤの言うことを聞いておけば、数百年後には『青薔薇連合会』に匹敵する組織になれたかもしれないのに。

自分でその可能性をフイにして、猪突猛進に突っ込んでくるとは。

本当、馬鹿の骨頂。

何でルリシヤは、そんな馬鹿を信じていたんだと思うくらい。

「焦り過ぎにも程がありますよ。全く」

「…まぁ、貧民街出身なら…分からないこともないがな」

…何?

「…ルルシーは、グリーシュの気持ちが分かると?」

「全く分からないこともないよ。自分の受けた理不尽を、誰かのせいにして復讐する…。貧民街ではそれだけで、明日を生きる糧になるからな」

「…成程」

復讐は最大のエネルギー。間違っちゃいないな。

俺はグリーシュ曰く「元貴族様」だから、グリーシュの気持ちは分からないということなんだろうな。

そういやルアリスもそうだった。理不尽に抗って、強大な敵と戦う…。皆考えることは同じってことなのかなぁ?

俺達が悪者にされてるのが納得行かないが。

俺達は何も、横暴なことをしている訳じゃない。

何でラスボス扱いされてるのか、善良な俺には皆目さっぱり見当がつかないよ。

「確かに『セント・ニュクス』は俺達の脅威にはなり得ない。だが…一応、ルリシヤが元いた組織だ。侮るなよ、ルレイア」

「分かってますよ。俺はそもそも、敵を侮って突っ込んだことなんてないじゃないですか」

「…は?」

え?何、その顔。

俺の聞き間違い?みたいな顔しないで。聞き間違いじゃないから。

「猪突猛進ルティス帝国代表が、何言ってるんだ?」

「さぁて、早く帰りましょうか~。ちょっとでも仮眠取っておきましょう」

そして、明日からの戦争に備えるとしよう。

俺は、ほら。思い立ったが吉日、思い付いたらすぐ行動タイプだから。

善は急げって言うだろ?それだよ。

決して考えなしに見境なく突っ込んでる訳じゃないんだよ。本当。
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