The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
結局兄は、両親を手にかけたことについても、マフィアに入ったことについても、私を責めはしなかった。

よく生きててくれた、良かった。そう言っただけだった。

「…アイズは…今は、一人で暮らしてるの?」

「一人だけど…でも、よく仲間が泊まりに来るから、寂しくはないよ」

主に、アリューシャである。

「アイ公~、泊めて~」って言って来る。

何なら帰宅時に当たり前のようについてくる。

別に構わないけど。

「仲間?」

「うん。私にとっては…もう、家族も同然」

「フランベルジュ様の邸宅に来たとき…何人か、若い子と一緒にいたよね。随分…その、グラマラスな子と…」

「あぁ…ルレイアね」

オブラートに包んでくれたけど、要するにエロい人と一緒にいたよね、ってことだ。

「確かに彼は、敵に回すととても厄介な人ではあるけどね…。それだけに、味方につけると心強いよ」

今や『青薔薇連合会』は、ルレイアがいないと回らなくなってるもんな。

あんなに頼り甲斐のある仲間はいない。

「他に一緒にいた子は、アイズの部下?」

「まさか。皆私と同じ幹部仲間だよ。ルルシーと…アリューシャと、それからシュノ」

ティターニア家の邸宅を訪ねたときは、まだ革命の途中だった。

従って、ルリシヤはまだ仲間じゃなかった。

「皆良い人達だよ」

マフィアの幹部なのに、良い人、と言うのもおかしいかもしれないが。

でも、私にとっては彼らは大事な仲間。家族だ。

「そっか…。仲が良いんだね?」

「まぁね。特にアリューシャとは」

「…女の子?」

まさか。

「女の子じゃないよ。残念ながら…。ちょっとお馬鹿だし、手もかかるけど…でも良い子だよ」

ルルシーは、アリューシャを甘やかし過ぎだ、と言うけど。

ついつい、世話を焼いてあげたくなるんだよね。これが。

兄が幼い頃、無愛想な私のことを気にかけてくれたのと…同じ気持ちなのかもしれない。

「そう…。仲間と仲良くしてるんだね。良かった…」

「うん」

「…でも、ちょっと残念だよ」

え?

「もし良かったら…一緒に住めないかな、と思ってたから…」

「…兄さん…」

「でも、その必要はないみたいだね」

「…ごめんね」

「ううん。アイズが幸せそうで、安心した」

…幸せ?

私って、今…幸せ、なのだろうか?

…そう見えてるということは、そうなのだろう。

だって、自分だって…そう思うから。






別れるときに。

「今日はありがとう。久し振りに会えて良かった」

「…私もだよ。ありがとう」

「また…連絡しても良い?」

「…」

…どうかな。マフィアの幹部である私と、関わりは持たない方が良い。

最悪、命を狙われることさえある。

だが。

「…頻繁には無理だけど、たまになら」

たった一人の血の繋がった家族と、もうこれっきりというのは。

あまりにも、薄情なように思えた。

それに…私はこの兄のことが、昔から好きだった。

会えるものなら、また会いたいとも思う。

今は…それどころじゃない状況なのかもしれないけど。

「じゃあ…またね、アイズ。元気で」

「兄さんこそ」

ここに来る前は、あんなに沈んだ気持ちだったのに。

会わせる顔なんてないと思ってたのに。

今は、晴れやかな気分だった。
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