The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
そうだ。ルニキスがもし、『青薔薇連合会』に勧誘されたら。

あいつは行くだろう。ルニキスは優秀だ。俺も、誰でも、それは分かっている。

このまま『セント・ニュクス』にいても、俺達が『青薔薇連合会』に対抗出来るようになるには何年も、何十年もかかる。

その間ずっと、『青薔薇連合会』や他の多くの組織に、いつ潰されるかと怯えながら過ごさなくてはならない。

そんな中で、もしルニキスが『青薔薇連合会』に勧誘されたら?

…残された俺達は、最早組織ですらない。

ただの烏合の衆だ。

俺は戦慄した。本当に、俺達はルニキスに依存し過ぎている。

「ここいらでルニキスとは縁を切りませんか」

「縁をって…。そんな簡単に」

やろうと思って出来ることじゃないだろう。そんなの。

しかし、フライデルは信じられないようなことを、涼しい顔で俺に提案した。

「簡単ですよ。裏切られる前に裏切れば良い。それだけです」

「…!」

…裏切る?

ルニキスが裏切るんじゃなくて、俺がルニキスを裏切る?

そんなことが出来るのか?

「我々の手を取ってください、グリーシュ殿。ルニキスに依存した『セント・ニュクス』から解放されるんです」

「…で、でも…」

「安心してください。我々はルニキスのように、あなた方を独裁しようとはしません。あくまで対等な立場であなたに助言しますよ」

「…」

それでも俺は即断出来なかった。俺の頭の中には、今までルニキスと…ルリシヤと…共に過ごしてきた日々が、走馬灯のように流れていた。

俺がルニキスを裏切れば、あの日々は…あの時間は、全てなかったことになってしまう。

良いのか、本当に。俺はルニキスを裏切ることが出来るのか。

…恩を仇で返すのか。俺は。

「…どうせあなたが思っているほど、ルニキスはあなたを大事になんてしてませんよ」

「…!そんな…ことは」

「ない、とでも?お忘れですか。ルニキスは貴族の生まれ。あなたとは所詮、生まれた場所も育った環境も違う」

…それは。

おれが、ずっとルニキスに感じていたコンプレックスだった。

「貴族の人間は、平民と友情を育んだりしませんよ。仲良くする振りをして、腹の中では見下している…。そういう生き物です。そういう血が生まれつき流れているのだから」

「…」

「さぁ、決心してください。グリーシュ殿…。いつルニキスが裏切るかと怯えながら過ごすか、それともここできっぱりとルニキスを切り捨て、自分達の力で生きていくか…。あなたは、どちらを選びますか?」





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