こっから先ははじめてだから
頬が少し染まっていて、悲しそうに眉を下げ、憂いの瞳で私に聞いてくる。
私はたじたじで、ちょっと予測不能関数だなあ。
すっと息を吸って、言葉よりも先に首をふるふると横に振る。嫌なわけないよって。
「爽ちゃんて、顔ちっちゃいなあ。」
「ふぇっ、」
私の頬に、人差し指を当てる先輩。
憂先輩の指の威力は、シシ神様並。親指と一緒に頬をつままれて、刈谷の脳がゆっくり溶かされ初める。
「キスする時、きっと大変やろなあ。」
「へっ、」
「あかん。今の俺の発言、有罪もん。」
「い、いえ。先輩なら、無罪放免です!」
「ほんま?でも爽ちゃんになら有罪で捕まるのも悪ない。」
「……せんぱい、酔ってます?」
「可愛い後輩に酔うてます。」
う〜ん参ったなあ〜。
ほら、甚大な被害者たちが、そわそわとこちらを見てますよ、先輩。
私の頬から指を離し、その綺麗な指で、私の外ハネセミロングの髪をこっそり撫でてくる。
なんでそんなに愛おしいものを愛でるような目で見てくるの?
机に肘をついて、その手の甲に顎を乗せて。それだけで有名絵画を越えてくる。
お酒の力で潤いと艶をアップデートした先輩は、私からなかなか目を離してくれない。
無恥なにらめっこに困って、私が根負けして俯いてしまえば。
先輩は「無垢やなあ。」と今日一番の甘い笑顔を見せてくるから、私も「無垢やあらへんです。」と大吟醸 而今のせいにして笑い返した。