こっから先ははじめてだから

中途採用で央海倉庫に入社してきたという小窪さんは、私と同い年の女性社員だった。初めて同期と呼べる人物と、この東京本部で言葉を交わすことができたのだ。


“よろしくお願いします”を非常階段で堪能していれば、フロアの廊下からは、なぜか朋政課長と古馬都さんが言い合っている声が聞こえてくる。


『なんで私があんたんとこの資料コピーしなきゃなんないの?!私は雑用係じゃないっての!』

『雑用でもなんでもやりますって顔に書いてあったから!あ、それ300部ずつコピーね!』

『どんな顔やねん!』

『なんかやたらと濃いい顔。』

『朋、帰り道の背後に気をつけなさい。』

『喜んでー。』

     
苦笑いを小窪さんに向ければ、同じように苦笑いで返してくれた。ああ。小窪さんの笑顔はピンクのハギーワギーのようでかわいい。

    
「今日は午後から横浜支部との合同研修会があって、営業部は朝からバタバタしているんです。」
 
「朋政課長と古馬都さんって、仲いいですよね。」

「ああ、あの二人、昔は同じ営業部で張り合っていたそうで。昔は相当仲悪かったらしいですよ。」   
  
「…え?古馬都さんって営業だったんですか?」

「らしいですよ?今では総務にいますけど。」 

「へえ…。」

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