こっから先ははじめてだから
「……ここは職場で研修中なので。プライベートで話しかけるのはやめてください。」
そう言って、冷たい温度と態度で突き放されて。
打たれ弱い私は、しゅんと気持ちが沈んでしまった。
なんで今日に限ってコミュ力の神が下りてきちゃったの?
コミュ力の神を呪いかけましたよ。
研修の席に戻れば、システム管理部で同期の大輪田《おおわだ》君がフォローしてくれた。
「刈谷さん、……憂さんと、知り合いなの?」
「大輪田君。うん、ちょっとねー。」
「あの人、誰に対しても冷たいし、気にしないほうがいいよ。」
「そうなの?」
「冷淡冷徹で無表情って有名だよ。」
「そう、なんだ?うん。ありがとう。」
「それよりさ!今日、一緒に帰らない?」
「ごめーん。今日は経理部合同研修会の飲み会でねえ。」
「ああ、そっか。うん。じゃあまた誘うよ。」
黒縁メガネの大輪田君。同期で新卒以来ずっと仲良くしてくれている一人だ。
私に気があるのはバレバレで、でも私はそれをふんわりとバッサリ突き放してしまっている。
なんていうか、世の中の人といい、私の仲のいい同期たちといい、皆普通に恋愛しているのが信じられないんだ。
他人に必要以上に踏み込まれるの、こわくない?
特に異性には壁を作ってしまう癖がある。
ごめんね、大輪田君。いい人なのにね。