こっから先ははじめてだから


「牧多《まきた》さん、お酌なら俺が。」


私がビール瓶を手にした時、刈谷とおじさんの合間からふいっと憂先輩が割り込んだ。


「あ、ああ憂くん!珍しいね君ぃ!」

「ええ、今日は可愛い後輩が主役ですから、俺も参加させていただきました。」

「そうかあ。確かにちっこくて可愛い後輩だもんなあ」


憂先輩が、さりげなく私を主役だと伝えてくれて。きっとおじさんに、刈谷は主役だからお酌の必要はないんですよって教えてくれたんだ。

ちょうどコップ一杯分のビールが瓶には残っていて、それを憂先輩がおじさんの持つコップに注ぎ入れる。

全然泡が立たない最後のビール。空になったビール瓶をおじさんに見せて、憂先輩が言った。


「きっと古馬都さんがビール持ってると思います。」

「じゃあ古馬都ちゃんの2杯目をおかわりしに行こうかな。」


おじさんが憂先輩のビールを飲み干すと、本当に古馬都さんという女性のところに行ってしまった。

ねえ先輩。予測計算したの?

刈谷も計算好きだから、先輩の方程式が見えちゃったりするんだよ。

私、ぜんぜん可愛くない後輩だよ。先輩。
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