異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「んもぅ~。そんな、照れなくたっていいのに!」

 まるで牛かと錯覚するような鳴き声とともに不満そうな態度を示したキララは、ぷっくりと頬を膨らませてふてくされた表情を披露すると、カイブルの指先を強引に両手で掴んで握手をした。

「末永く、よろしくね!」

 満面の笑みを浮かべるキララが、憎たらしくて仕方がない。

(ロルティ様を守るために必要だとはいえ……。このままでは、自分を抑えきれない……)

 引き攣った微笑みさえも浮かべる余裕がないことに危機感を感じながら、カイブルはキララの手が離されるのをじっと待ち続けていた。

「聖女様。本題に入っても、よろしいでしょうか」
「きゃっ。いっけなーい! カイブルがかっこよすぎて、ついがっつきすぎちゃった!」

 キララはすぐに口から本心が飛び出てくるタイプらしい。
 上司からいつまで部下の手を握っているつもりなのだと遠回しに指摘された聖女は、カイブルの手を離すとくるりと意味もなくその場で回転し、スカートの裾を翻す。

(随分と下品な方ですね……)

 彼にとってキララは、聖女である限り到底受け入れがたい存在だ。
 膝上のスカートを意味もなく揺らして美脚をアピールされたところで、まったく心には響かなかった。
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