異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「ロルティだけの、護衛ってことだよ」
「それって、凄いの?」
「うーん。どうかな……。それはなんとも言えないけど、ロルティの命令が絶対なのは、確かだよ」
「カイブルには、えへんってしてもいいの?」

 ロルティは腰元に両手を当て、胸を張って威張ってみせた。
 目を細めてきりりとした印象を与えようと頑張っているあたり、父親の真似をしているのかもしれない。

「専属騎士じゃなくたって、公爵家にいる人間はみんなロルティの言うことを聞いてくれると思うけどね……」
「ジュロド。いつまで立ち話をしているつもりだ。訓練が終わったのなら、部屋に戻れ」
「はい、父さん」

 兄の含みのある言葉に首を傾げていたロルティは、父親からの厳しい声にビクリと肩を振るわせた。

「パパ……怒っちゃ、やだ……」
「お、落ち着け。ロルティ。俺はジュロドに言ったんだ」
「ロルティを泣かせるなんて……父さんは最低だな」
「ち、違う! すまない。パパが悪かった……!」

 ジェナロは息子から蔑まれたことも大きく影響したのか。
 普段の厳格な父親像とは遠く離れた情けない姿を披露すると、オロオロと視線を彷徨わせロルティをどうしたら大泣きさせずに済むのかと右往左往している。

(たまには、こんなパパとおにいしゃまも、悪くないかもね!)

 ロルティは父親と兄の新たな一面が見れたことに満足しながら、護衛騎士の手を取って走り出す。

「カイブル! 行こっ!」
「ロルティ様? 走ると、危ないですよ!」
「あははっ。平気だよー!」

 大好きな人と手を繋いで楽しくてしょうがないロルティは、足が棒になるまで屋敷内を駆け回っていた。
< 129 / 192 >

この作品をシェア

pagetop