異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
『私の言うことを聞け!』
『うわああーん!』

 両手を拘束され泣き叫ぶ幼子の涙が床に溜まり、小さな水溜りを作る。

(今どきの子どもは、根性なしばかりだな……)

 想像力が逞しいと言うべきか。
 鞭で床を叩いただけなのに、その先端が自らの身体にぶつかるのではと怯えて泣き叫ぶのだから。

(聖騎士見習いであれば、もっと違った光景になるのだろうが……)

 彼が目の前にいる聖女見習いを廃棄するべきか悩んでいると、床の上にできた水溜りから、ぴょこんと純白の毛が生えた長い耳らしきものが生えてきた。

『な……』
『むきゅ……!』

 長い毛に覆われているせいだろうか。

 手足だけではなく、瞳すらも埋もれてどこについているのかわからない。
 アンゴラウサギのような獣は、甲高い鳴き声を上げるとロルティを守るようにブルブルと全身を震わせながらガンウの前に立ちはだかった。

『ふむ……』
『きゅう! きゅ、きゅー!』

 ガンウはふさふさの毛に埋もれる垂れ耳を掴むと、そのまま謎のウサギ身体検査を行う。

 ――あとでわかったことだが、この獣は普通のアンゴラウサギではなかった。
 聖なる力を宿す、聖獣だったのだ。
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