異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 弱みのある人間を脅せば――少ない人数で簡単に、聖女が手に入る。

「君もたまには、いいことを言うじゃないか」
「司祭様にお褒め頂き、大変光栄です」

 この神官には、どうしてもあの儀式を行わなければならない理由があるのだ。
 そう簡単に裏切るような人間ではない。

(たとえ私が息絶えたとしても。我々の意志は、彼が引き継いでくれるだろう)

 たとえ自らの命を引き換えにしても。
 必ず聖女を手に入れてみせる。

 そう決心した彼は、ガンウは最悪の場合を想定して行動すると決めた。

「我々神殿は、聖女見習いロルティを聖女として認める。洗礼の義を行うとでも言って、彼女を呼び出せ」
「はっ」
「応じないようなら……。次の段階に移行する」
「かしこまりました」

 冷静さを取り戻した彼は、床に散らばった破片を踏みしめながら地下を出る。

 ――痛みなど感じなかった。
 彼の頭の中は、初めて義娘を虐げた際目にした奇跡でいっぱいだったからだ。

(あの時に、彼女を聖女として任命していれば……)

 当時のことを思い出したガンウは、悔しそうに唇を噛みしめる。
 ――彼が聖女を虐げることで魔物を召喚できると知ったのは、偶然だった。
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