異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。　追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません！
「ロルティは、俺の妻の遺伝子を受け継いだんだ」
「つま？」
「君の母親は、エメラルドの瞳をしていた」
「わたし、ママと同じなの!?」
「ああ。そうだ」

　ロルティと同じ目をした人間がもう1人いると知っているカイブルが言葉を濁していた理由は、ジェナロから話すべきだからと遠慮したからだったのだろう。
　パッと笑顔を浮かべた彼女はすぐにキョロキョロとあたりを見渡し、母親の姿を探しながら疑問を口にした。

「ママは……？　パパのお家で、わたしを待っててくれる……？」
「……いや……」

　ジェナロがロルティを抱きしめる力を強めた瞬間、彼女は母親が公爵家にいないのだと悟った。

　言いづらそうにしているあたり、あまりよくないことなのだろう。
　察しのいいロルティは自ら父親に向かって、彼が口にするのを嫌がっている単語を伝えた。

「ママ、死んじゃったの……？」
「すまない。ロルティ。俺が身重の彼女を、もっと気にかけてやれば……」

　ジェナロがいつまで経っても事実を明らかにしなかったのは、幼いロルティに伝えても意味が理解できないと考えているわけではなく、彼女の母親が亡くなったことを悔いているからのようだ。
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