異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(せめて、ロルティだけは……)

 彼女の代わりに娘を守りたいと考えることすら、烏滸がましい。

 その自覚くらいはあるが、それがジェナロのできる唯一の罪滅ぼしであれば、やるしかないのだ。

「パパー!」

 彼が人知れず心の中で愛娘を守ると決意を秘めれば――勢いよく廊下に繋がる扉が開き、ロルティがジェナロに向かって飛んでくる。

「あっ。こら! ロルティ! ノックもなしに、駄目だろ?」
「むきゅう!」
「あっ。うさぎしゃん!」

 後方から顔を出した兄に怒られた妹が父親の足元へダイブする前に歩みを止めれば、小さな足を動かして壁の隅っこから真っ白なもふもふとした獣がロルティの胸元へと飛び込んでいく。

 彼女はしっかりとアンゴラウサギを抱きしめると、嬉しそうにはにかんだ。

「んむきゅ!」
「元気いっぱいだね!」
「きゅむ~!」

 先程までこちらが気の毒になるくらい怯えていたとは思えぬアンゴラウサギの姿を目にしたジェナロは、口元を綻ばせた。

(俺達はロルティがいなければ、駄目になってしまったようだな……)

 彼女はハリスドロア公爵家を照らす、太陽だ。
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