おれは“祓えない退魔師”

プロローグ

 プロローグ

 俺は小さいころから、人には見えないはずのものが見えていた。
 ゆらゆら揺れる影や、こちらをじっと見つめる“なにか”。

 怖くて、怖くてたまらなくて、
 いつも俺は、母さんの背中にしがみついていた。

 「またかよ、弱虫ーー」

 周りの子にからかわれても、何も言い返せなかった。
 だって、本当に怖かったから。

 でも、母さんは違った。

 「(たすく)(たすく)のままでいいよ」

 そう言って、やさしく頭をなでてくれる。

 母さんは、退魔師だった。

 (あやかし)(はら)い、人を守る仕事。
 強くて、かっこよくて、やさしくて。俺の、いちばんの憧れだった。

 あの日ーー母さんの任務の日
 どうしても離れたくなくて、俺は黙ってあとをつけた。

 そのせいで、俺は、(あやかし)に襲われた。

 「(たすく)っ!!」

 気づいた母さんが、とっさに俺をかばった。
 次の瞬間、視界が真っ赤に染まった。
 倒れていたのは、母さんだった。
 血だらけで、動かなくて。

 (俺の、せいだ)

 息ができなくなる。

 (俺が、ついてきたから――)

 震える手で、母さんの手を握る。
 冷たくなっていくその手を、必死に引き寄せながら、俺は、願った。

 「神様、お願い……」

 声が震える。

 「母さんを、連れていかないで……!」

 涙で視界がにじむ。

 「俺、なんでもする……! だから、お願い……っ!」

 その願いが、届いたのかはわからない。
 母さんは、奇跡的に助かった。

 でも。もう、退魔師には戻れなかった。
 後遺症(こういしょう)で、霊力がほとんど使えなくなってしまったから。

 退魔師は、恨みを買う仕事だ。
 (はら)われた(あやかし)残党(ざんとう)や、執着を持ったものたちは、容赦なく牙をむく。
 霊力を失った母さんは、狙われ続ける存在になった。

 全部俺のせいだ。母さん、ごめん……

 今度は俺が、母さんを守る。
 母さんみたいに、強くなる。

 母さんが誇れるような、
 強くて、立派な退魔師になる。

 そう、決めたんだ。
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