おれは“祓えない退魔師”
第十六話
昼食は、昨日東間が話していた校長オリジナルメニュー・穢れを祓うスパイス浄化カレー。見た目は普通のグリーンカレーだが、食べると身体がポカポカして、霊力が活性する。弱い霊なら近寄れなくなる。味は普通にうまかった。
そして、午後の授業は体育。ジャージに着替えて、校門付近に集合するように言われている。例のごとく、バディごとに並ばされている。周りを見ると、バディ同士で談笑したりふざけあったりしている。東間と伊都も、楽しそうに話していて、時折、伊都の笑い声が聞こえる。
(まだ3日目なのに、みんな仲いいんだな)
ちらと隣をみると、銀髪は相変わらず何を考えているのかわからない顔で、ムスッとしている。
(話しかける……? いや、なんで俺から話しかけなきゃいけないんだよ!?)
「なんだ?」
じっと見ていたせいで気づかれてしまった。
「いや、別に」
(気まずい!)
寮の部屋や食堂では、伊都や東間が一緒にいるから二人きりになることはない。まぁ、こいつはバディ制度を無視して単独行動だから、顔を合わせることも少ないんだけど。授業中(特に実習)は強制的にバディでいなきゃならないわけで。
(ああああああ~~~~!!!!!)
気まずすぎて叫びだしそうになるのを、地団太を踏んでなんとか堪えた。
「…………」
銀髪は、眉を寄せて、冷ややかな視線を俺に向ける。
「そんな目でみんなよ」
ーードシンッ!
大きな音がした。校庭の木から何かが落ちてきたようだ。慌てて見に行くと、小学生くらいの女の子がお尻をおさえていた。
「イテテ……着地ミスったー」
(なんだこの子?)
「あ、みんなそろってる?」
慌てて立ち上がり、お尻をパンパンはたく。
「体育担当、風巻小鈴でーす!」
ポニーテールを揺らしながら、明るい声でにこにとこ笑っている。動きやすそうな藍色の忍者服を着ていた。
(え、この子が先生? どう見ても俺より年下なんだけど)
「退魔師は身体が資本、しっかり体力作りしていくよー!」
周りは目配せをしながらそわそわしている。このままじゃ気になって授業どころじゃない。
「先生!」
俺は思い切って手を上げた。
「はい、どうぞ」
「先生は、何歳ですか?」
びきっ、と先生のこめかみに血管が浮き出る。地雷を踏んだかもしれない。
「神代祐くん? 初対面の女性に年齢を聞くのは失礼ですよ」
「いや、でも、小学生にしかみえなーー」
突然、目の前から先生の姿が消えたと思ったら、俺は意識を失った。
「ーーおい、いつまで寝ている。さっさと起きろ」
銀髪の声で慌てて身体を起こす。
「え? なに? なにが起きた??」
「風巻先生がお前の首に手刀を打ち込んだ。それだけだ」
「それだけって……」
(こわ~……あの先生に年齢の話はタブーだな)
いつの間にか銀髪が、俺と自分の足首を布で結んでいた。
「なんだよ、これ」
「二人三脚だ。これで山道を走る」
「はぁ?」
「お前が寝ていたせいで遅れている。さっさと行くぞ」
急かされて立ち上がる。肩が触れて、息がかかりそうなくらい近い。
(ただでさえ気まずいのに、こんなに密着して走らなきゃいけないのかよ! しかも山道!)
「行くぞ」
銀髪が一歩踏み出した。
「ちょ、待てって!」
慌てて足を合わせようとするが間に合わずーー
バタンッ
二人そろって前のめりに転んだ。
「遅い」
「お前が早いんだろうが!」
今度は踏み出す足を決めてからスタートした。
「いち、に、いち、に……」
ぎこちなく進み始めるが――
「うわっ!」
足がもつれて、また前のめりに転びかけた。その瞬間、ぐいっ、と腕を引かれた。
「……っ、気をつけろ。足が上がってない」
気づけば、銀髪の手が俺の腕をしっかり掴んでいた。
(今、助けてくれたのか……?)
「ぼんやりするな」
「してねぇよ!」
慌てて体勢を立て直す。
(……なんだよ、普通に助けんじゃん)
「合わせろ」
「は?」
「俺の歩幅に」
「なんでだよ! そっちが合わせろ!」
「効率が悪い」
「知るか!」
整備されていない山道。比較的勾配は緩やかだけど、足をくくられてたら一歩進むのも大変だ。
「ちょっ、速い!」
「遅い」
「うわっ!」
「……はぁ」
何度もバランスを崩し、そのたびに距離が近づく。肩がぶつかる。腕が触れる。
(やりにくい……)
「……っ、一回、止まろうぜ」
銀髪が足を止める。
「なんだ」
「このままだと絶対無理」
額からたれる汗を手の甲で拭い、息を整えながら言う。
「……肩組んだらさ、少しは走りやすくなんじゃねぇの?」
少しの沈黙、銀髪はわずかに目を細めた。
「……そうだな。その方が体勢も安定する」
(あれ?)
絶対に嫌な顔をされると思っていたから毒気を抜かれた。
そして、午後の授業は体育。ジャージに着替えて、校門付近に集合するように言われている。例のごとく、バディごとに並ばされている。周りを見ると、バディ同士で談笑したりふざけあったりしている。東間と伊都も、楽しそうに話していて、時折、伊都の笑い声が聞こえる。
(まだ3日目なのに、みんな仲いいんだな)
ちらと隣をみると、銀髪は相変わらず何を考えているのかわからない顔で、ムスッとしている。
(話しかける……? いや、なんで俺から話しかけなきゃいけないんだよ!?)
「なんだ?」
じっと見ていたせいで気づかれてしまった。
「いや、別に」
(気まずい!)
寮の部屋や食堂では、伊都や東間が一緒にいるから二人きりになることはない。まぁ、こいつはバディ制度を無視して単独行動だから、顔を合わせることも少ないんだけど。授業中(特に実習)は強制的にバディでいなきゃならないわけで。
(ああああああ~~~~!!!!!)
気まずすぎて叫びだしそうになるのを、地団太を踏んでなんとか堪えた。
「…………」
銀髪は、眉を寄せて、冷ややかな視線を俺に向ける。
「そんな目でみんなよ」
ーードシンッ!
大きな音がした。校庭の木から何かが落ちてきたようだ。慌てて見に行くと、小学生くらいの女の子がお尻をおさえていた。
「イテテ……着地ミスったー」
(なんだこの子?)
「あ、みんなそろってる?」
慌てて立ち上がり、お尻をパンパンはたく。
「体育担当、風巻小鈴でーす!」
ポニーテールを揺らしながら、明るい声でにこにとこ笑っている。動きやすそうな藍色の忍者服を着ていた。
(え、この子が先生? どう見ても俺より年下なんだけど)
「退魔師は身体が資本、しっかり体力作りしていくよー!」
周りは目配せをしながらそわそわしている。このままじゃ気になって授業どころじゃない。
「先生!」
俺は思い切って手を上げた。
「はい、どうぞ」
「先生は、何歳ですか?」
びきっ、と先生のこめかみに血管が浮き出る。地雷を踏んだかもしれない。
「神代祐くん? 初対面の女性に年齢を聞くのは失礼ですよ」
「いや、でも、小学生にしかみえなーー」
突然、目の前から先生の姿が消えたと思ったら、俺は意識を失った。
「ーーおい、いつまで寝ている。さっさと起きろ」
銀髪の声で慌てて身体を起こす。
「え? なに? なにが起きた??」
「風巻先生がお前の首に手刀を打ち込んだ。それだけだ」
「それだけって……」
(こわ~……あの先生に年齢の話はタブーだな)
いつの間にか銀髪が、俺と自分の足首を布で結んでいた。
「なんだよ、これ」
「二人三脚だ。これで山道を走る」
「はぁ?」
「お前が寝ていたせいで遅れている。さっさと行くぞ」
急かされて立ち上がる。肩が触れて、息がかかりそうなくらい近い。
(ただでさえ気まずいのに、こんなに密着して走らなきゃいけないのかよ! しかも山道!)
「行くぞ」
銀髪が一歩踏み出した。
「ちょ、待てって!」
慌てて足を合わせようとするが間に合わずーー
バタンッ
二人そろって前のめりに転んだ。
「遅い」
「お前が早いんだろうが!」
今度は踏み出す足を決めてからスタートした。
「いち、に、いち、に……」
ぎこちなく進み始めるが――
「うわっ!」
足がもつれて、また前のめりに転びかけた。その瞬間、ぐいっ、と腕を引かれた。
「……っ、気をつけろ。足が上がってない」
気づけば、銀髪の手が俺の腕をしっかり掴んでいた。
(今、助けてくれたのか……?)
「ぼんやりするな」
「してねぇよ!」
慌てて体勢を立て直す。
(……なんだよ、普通に助けんじゃん)
「合わせろ」
「は?」
「俺の歩幅に」
「なんでだよ! そっちが合わせろ!」
「効率が悪い」
「知るか!」
整備されていない山道。比較的勾配は緩やかだけど、足をくくられてたら一歩進むのも大変だ。
「ちょっ、速い!」
「遅い」
「うわっ!」
「……はぁ」
何度もバランスを崩し、そのたびに距離が近づく。肩がぶつかる。腕が触れる。
(やりにくい……)
「……っ、一回、止まろうぜ」
銀髪が足を止める。
「なんだ」
「このままだと絶対無理」
額からたれる汗を手の甲で拭い、息を整えながら言う。
「……肩組んだらさ、少しは走りやすくなんじゃねぇの?」
少しの沈黙、銀髪はわずかに目を細めた。
「……そうだな。その方が体勢も安定する」
(あれ?)
絶対に嫌な顔をされると思っていたから毒気を抜かれた。