おれは“祓えない退魔師”

第三十一話

 受け取った封筒から手紙を取り出す。そこには少し懐かしい、母さんの字が並んでいた。


 ーー祐へ

 小さいころから、あなたには寂しい想いをさせてきましたね。
 任務で家を空けることも多くて、帰ったときには、あなたが眠っていることも多かった。

 それでもあなたは、
 「母さん、かっこいい」って、いつも笑ってくれたね。

 あの言葉に、私は何度も救われました。

 あなたがいてくれたから、私は退魔師でいられました。
 私の息子として生まれてきてくれて、本当にありがとう。

 どうか、無理はしないでください。
 でも、祐がやりたいと思ったことは、最後までやりきりなさい。

 うまくできなくてもいい。
 間違えてもいい。

 あなたは、あなたのままでいい。

 私は、そんな祐を誇りに思っています。
 ずっと、応援しています。


 「なんなんだよ……」

 胸の奥を、ぎゅうっとつかまれたみたいに苦しくて、うまく息ができない。

 「……っ、こんなこと言われたら」

 呼吸が浅くなる。また視界がにじんで、みんなの顔がゆらゆらする。

 「あきらめられねーじゃんか……!」

 (俺は、ひとりじゃない。それに――まだ終わってない)

 ぽろぽろと涙がこぼれる。
 伊都が、同じように涙を流しながら、抱き着いてきて。
 東間が、泣くのを我慢しながら背中をさすってくれて。
 士稀が、俺をまっすぐにみながら力強くうなずいた。

 涙でぐちゃぐちゃになった顔を、手の甲でこすった。
 みんなの顔を順番にみながら、ぐっと拳を握る。

 「……やる」

 三人が俺を見る。

 「俺、特別試験、受ける!」

 東間が笑う。

 「よっしゃ、決まりやな」

 伊都も嬉しそうにうなずく。

 「がんばろうね」

 士稀は――

 「当然だ」

 とだけ言った。その一言が、妙に心強かった。
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