おれは“祓えない退魔師”
第三十二話
試験前日の夜。寮の一室に、俺たちは集まっていた。
机の上には、洞窟の簡単な見取り図と、東間がまとめたメモが広げられている。
「ほな、作戦の最終確認いくで」
東間が指で机を軽く叩き、場の空気を引き締めた。
「相手はあのクモ。完全には祓われてへん。せやから――“倒す”んやなくて、“弱らせて封印”や」
「竹筒に入れて持ち帰る、だったよね」
伊都が不安そうにうなずく。
「そう。で、そのためにはまず動きを止めなあかん」
東間が視線を士稀に向ける。
「士稀くんは、足止め」
「問題ない。糸と脚の動きを封じる」
淡々と答える士稀。その声には迷いがない。
「俺は補助やな。隙つくる係」
「……じゃあ俺は?」
思わず口を挟むと、三人がじっとこちらを見る。そのあと東間が、いつも通りの調子で言った。
「祐くんは――切り札や」
「切り札?」
「祐くんのの霊力、あのクモめっちゃ反応しとったやろ。あれ、確実に引きつけられる」
あの時の光景がよぎる。クモは憑りついていた伊都から離れ、まっすぐに俺に向かってきた。
「囮、ってことかよ」
「まぁ、言い方は悪いけどな。でも、それが一番効く」
東間はまっすぐに俺を見る。
「無理はさせへん。タイミングは俺らが合わせる」
伊都がぎゅっと拳を握る。
「ぼくも、やってみたいことあるから」
「魔法陣、だろ?」
「うん。少し時間かかるけど……完成すれば、ちゃんと還せると思う」
“還す”。
俺にはできないことだけど。
「……任せた」
小さくそう言うと、伊都はほっとしたように笑った。
「最後は祐くんや」
東間がにやっと笑う。
「弱ったところに一発、ぶち込んだってくれ」
「それしかできねぇからな」
自嘲気味に言うと、
「それでいい」
士稀が、短く言い切った。思わず顔を上げる。
「お前の力は使い方次第だ」
俺をまっすぐ見て、すぐに視線を外した。相変わらず、不器用な言い方だ。
(でも、前とは確実に違う)
少しだけ、胸の奥が軽くなる。
「ほな決まりやな」
東間が手をパンと叩く。
「四人で、絶対成功させる。それだけや」
「うん」
「当然だ」
「……ああ」
小さくうなずいたけど、胸の中の不安は消えないしめちゃくちゃ怖い。
(やるしかねぇ)
静かに拳を握った。
机の上には、洞窟の簡単な見取り図と、東間がまとめたメモが広げられている。
「ほな、作戦の最終確認いくで」
東間が指で机を軽く叩き、場の空気を引き締めた。
「相手はあのクモ。完全には祓われてへん。せやから――“倒す”んやなくて、“弱らせて封印”や」
「竹筒に入れて持ち帰る、だったよね」
伊都が不安そうにうなずく。
「そう。で、そのためにはまず動きを止めなあかん」
東間が視線を士稀に向ける。
「士稀くんは、足止め」
「問題ない。糸と脚の動きを封じる」
淡々と答える士稀。その声には迷いがない。
「俺は補助やな。隙つくる係」
「……じゃあ俺は?」
思わず口を挟むと、三人がじっとこちらを見る。そのあと東間が、いつも通りの調子で言った。
「祐くんは――切り札や」
「切り札?」
「祐くんのの霊力、あのクモめっちゃ反応しとったやろ。あれ、確実に引きつけられる」
あの時の光景がよぎる。クモは憑りついていた伊都から離れ、まっすぐに俺に向かってきた。
「囮、ってことかよ」
「まぁ、言い方は悪いけどな。でも、それが一番効く」
東間はまっすぐに俺を見る。
「無理はさせへん。タイミングは俺らが合わせる」
伊都がぎゅっと拳を握る。
「ぼくも、やってみたいことあるから」
「魔法陣、だろ?」
「うん。少し時間かかるけど……完成すれば、ちゃんと還せると思う」
“還す”。
俺にはできないことだけど。
「……任せた」
小さくそう言うと、伊都はほっとしたように笑った。
「最後は祐くんや」
東間がにやっと笑う。
「弱ったところに一発、ぶち込んだってくれ」
「それしかできねぇからな」
自嘲気味に言うと、
「それでいい」
士稀が、短く言い切った。思わず顔を上げる。
「お前の力は使い方次第だ」
俺をまっすぐ見て、すぐに視線を外した。相変わらず、不器用な言い方だ。
(でも、前とは確実に違う)
少しだけ、胸の奥が軽くなる。
「ほな決まりやな」
東間が手をパンと叩く。
「四人で、絶対成功させる。それだけや」
「うん」
「当然だ」
「……ああ」
小さくうなずいたけど、胸の中の不安は消えないしめちゃくちゃ怖い。
(やるしかねぇ)
静かに拳を握った。